第12章 勇者の資質
マヤ「お隣…失礼しますね…」
イオリ「貴女は…確か…坂川真矢さん…ですよね…?」
マヤ「私を知ってるの…?」
イオリ「はい…友達が貴女のファンで…私も試合を見た事があります…」
転移する前の事…
伊織は一優から真矢の話をよく聞かされており
その関係で彼女の試合を見た事もあった。
イオリもまた彼女が選手生命を断たれた理由を知っており
マヤの口から以前記事で見た武術大会の真実を聞かされる事となった。
マヤ「そっか…なら友達には情けない姿を見せちゃったんだね…」
イオリ「そんな事…」
マヤ「今だってそう…先日の武術大会でやられた傷が深くて立ち直れずにいるんだ…」
イオリ「武術大会…?確か決勝進出者が暴れて無効になったって…」
マヤ「その決勝進出者が暴れたのは準決勝で闘ってた私を助ける為なの…失神してたから直接見たわけじゃないけどね…」
武術大会の傷が今でも痛むマヤ
傷ついた身体を見たイオリは同性として思わず泣きそうになっていたが
アサミは何も言わずに彼女の身体を治療していた。
彼女の回復魔法は本気ならば瀕死の重傷からでも復活出来るほどの性能であり
マヤが気がつく頃には身体の傷が完治していた。
マヤ「身体の傷が…どうして…?」
アサミ「この温泉には女神マミの加護が宿ってる…だから湯治に来たんでしょ?」
マヤ「…貴女は…?」
アサミ「私はアサミ…女神マミを信仰とする賢者だよ!」
マヤ「賢者様…?」
アサミ「ねぇ…私達のパーティに入らない?私達…魔王討伐に向けて修行中なんだ!」
イオリ「ジャックさんは違うような…」
事情を説明しマヤをパーティへと勧誘するアサミ
カズマサとマヤの関係を知る彼女からしてみれば魔王の討伐にこれほど適した人材はいなく
身体の傷が治った事もあってマヤはパーティへの参加を承諾した。
彼女は異世界に転生してから1年間…たった1人で格闘スキルを磨き続けており
その強さは並の男を遥かに凌駕する粋に達していた。
マヤ「改めまして…武闘家のマヤです!よろしくお願いしますね!」
彼女の実力を知るイオリは勿論
人数が増える事で自分への被害が減ると考えたジャックも彼女を歓迎し
翌朝
マヤをパーティに加えた一行はアサミのゲートにてブラドゥークへと帰還した。
こうして4人のパーティが結成されたが
魔王と交戦した事のあるイオリはまだまだ討伐出来るレベルではない事を理解しており
いきなり魔王を討伐するのでは無く
各地を侵略している魔王軍を順番に倒すべきだと提案した。
イオリ「ギルドによると今魔王軍は風…水…雷の各国を侵略しているわ…順番に倒していくのがセオリーだよね?」
ジャック「風の国は嫌だぞ…もう砂漠には2度と行きたくない…」
マヤ「兵力を考えたら水の国が一番安全だと思うけど…」
アサミ「兵力があるって事は魔王軍も強力なモンスターを送ってる可能性が高いわ!一番規模の小さい雷の国から行くべきじゃないかしら?」
会議の結果
満場一致で風の国以外の二択となり
悩んだ末
イオリは雷の国へと向かう決断をくだした。
現在雷の国アルザークは毒蛇王ゾーリャ率いる爬虫類軍団の侵略を受けており
ワニや蛇と行った
女性陣が苦手そうなモンスターが勢揃いしていた。
アサミの都合で出発は3日後となり
その間
イオリは自らを鍛えるべく
マヤから格闘技を教わる事となった。
イオリ「きゃっ!」
マヤ「悪くない動きだけど…さすがに専門家として負けられないわ!歳も1つ上だしね!」
さすがに格闘技のみでの組手となればマヤが圧倒的であり
尻餅をついたイオリは彼女の身体を羨ましそうに見ていた。
10センチ近く高い身長
長く綺麗な手脚
胸こそ大して変わらなかったがその他のスタイル面では圧倒的にマヤに分があり
それは1年の差で変わるようなものでは無かった。
イオリ「今日はありがとう…結局1回も勝てなかったね…」
マヤ「イオリちゃん…大丈夫?怪我してない?」
イオリ「マヤちゃんが寸止めしてくれたから平気だよ…強いだけじゃなくて優しいんだね…」
マヤ「武道を嗜む人は優しい人が多いんだ…殴られたり投げれたりすると痛いでしょ?痛みを知るからこそ人にも優しく出来るんだよ…勿論…そんな人ばかりだけではないけどね…」
イオリ「マヤちゃん…」
マヤ「明日はいよいよ雷の国へ出発だね…頼りにしてるよ!リーダー!!」
拳で語り合う事で2人はお互いの距離を縮め
人見知りなマヤもイオリには心を開いていた。
イオリは勇者にとって最も重要な能力であるコミュニケーション能力を備えており
それはスキルポイントでは補う事の出来ない…数値化する事の出来ない能力だった。




