9.小さな疑念
それからというものローズは私たちと一緒にご飯を食べるようになりました。
「それでね、レオ様ったら先生に怒られちゃって」
彼女はくすくすと笑いながら、今朝授業中に起こったことをルークや銀狼さんに楽しげに話しています。
そしてそんな彼女をレオはにこにことして、見つめています。
(うんうん、順調だ。クラスでのレオ王子のローズに対する好感度を上げる、通称ラブアップイベントも成功したようで何よりだ)
私は彼女の話を聞きながらしめしめと、心の中でそう思っていました。
そんな私の心の内を知らないシャオは気遣わしげに私を見つめています。
(彼女には折を見ていつか私の気持ちを話さないといけないな)
私はそう考えながらシャオに大丈夫よ、という風に笑いかけました。
「ところでねっ、」ローズがそう言って勢いよくテーブルに乗り出した時、ガタンと机上のゴブレットが倒れてボタボタと中のぶどうジュースが零れました。
私はとっさに避けましたが、制服のスカートには紫色の染みが広がりました。レオたちはハッとした様子でこちらの様子を窺っています。
「ご、ごめんなさい」ローズは慌てた様子で椅子から立ち上がって来て私に駆け寄り、ハンカチを出して私の制服を拭こうとします。
「大丈夫だから」私は拭こうとした彼女の手をそっと制して言いました。
(昼休みはまだ時間あるからさっと帰って着替えてこよう)そう思って
「ちょっと着替えてくる」この状況をオロオロ見ていたシャオにそっと耳打ちして、私はカフェテリアを立ち去りました。
(やっぱりちょっとこの染みは目立つかな)
学園内を足早に帰宅するために歩いていたら、道行く他の生徒たちがジロジロと見てきます。
私がもっと早く帰ろうと歩く速度を早めようとした時、ちょっと待ってと後ろから声が掛かりました。
反射的に振り向くと、そこには銀狼さんが立ってました。
「こっちに来て」彼はそう言うとさっと私の手を引いて、自分の後ろに私を隠すようにしてどんどんと歩いて行きます。
「えっと、私の家反対なんだけど」私が恐る恐る切り出すと
「ええから。着いてきて」静かに有無を言わさない口調で彼は言いました。
そして彼が私を連れてきたのは、学園内における各国の王家の者達が休憩する特別な部屋でした。
「あ、あの私ここに入ってもいいの?」私のそんな質問にチラリと彼は私を見ると
「君は王子の婚約者だし、何より俺が彼に許可取ってる」彼はぶっきらぼうに言いました。
そして、部屋の入口に私を立たせたままさらに奥の方に行って左右に並んでいる左側のクローゼットから掛けてあった制服を取り出すと私に渡してきました。
「ありがとう」私がそう言うと
「奥の部屋で着替えておいで。俺がここで見張ってるわ」彼は感情の見えない黒い瞳でひたと私を見つめて言いました。
「う、うん」(なんで彼はこんな親切なの?王子が言いつけたのかしら?)私はそんなことを言いながら言われた通りに着替えたのでした。




