6.悪役令嬢のうたた寝
「…となるから、ここは覚えておくように」遠くで貿易学の先生の声が聞こえます。
私は昨日の夜中、興味本位で風の魔法の練習がてらに学園の周りの空中の散歩をしていたので、先生の説明を聞きながら、うつらうつらとしていました。
しかし、教科書に施した鏡の魔法で、先生がこちらに向かって来ていることをちらりと目の端に捉えたので、羽ペンにインクを付け直して、ノートにせっせと先ほどの説明を書き始めます。
先生は案の定私のところで立ち止まると、「リーファ嬢、先ほどの私の説明をもとにして、魔法を駆使して船を動かす際の原理を板書に書きなさい」と言いました。
「はい」私はそう返事すると立ち上がって前へ行くと、黒板のような大きい教室前に配置してある板に、すらすらと原理を書き始めました。
(私って悪役令嬢よね? なんだか私のイメージする悪役令嬢になりきれていない気がする) 私はその時ふとそんなことを思いました。
(それに銀狼さんとは、この授業ぐらいしか接点がないし)原理を書き終えて、自席に戻る際にチラリと彼の席の方を見ると、彼はフイッと顔を背けたように見えました。
(もしかして、嫌われてる!? というか考えてみたら、この一か月一言も話したことないよ。こんなんでどうやったら…)と私は彼のそんな反応を見て、一人落ち込んだのでした。
そして授業が終わり教室を出ようとした時、銀狼さんが珍しく(というか初めて)私の席のところまで来ました。
そして、「顔、インクついてる」そう言って自分の頬を指しながら話掛けてきました。
私ははっとして顔に手をやり(だから、あの時見られてたのか)と納得しつつ「教えてくれてありがとう」と言いました。
「ん」彼はそれだけ言うと、さっさと教室を出て行きました。
(は、初めて会話したよ。というか初めての会話がこんなんじゃ色気も何もないじゃん)私はますますしゅんとしたのでした。




