22.読めない心
「さすがにそれは、小説の読みすぎじゃないかな」
確かに私もデジャブのようなことを体験しましたが、そんな簡単に過去に戻れるとは思いませんでした。
「じゃあさ、もう1回あの場所に行ってみよ」
というわけで、私たちは再び蚊取り線香があったと思われる場所に戻ってきました。
すると、確かにそこには先程と同じように蚊取り線香があったのです。
「ほら、きっとこの先で、さっきと同じように2人が密会してるで」
そういうと銀狼は、先程とは違ってずんずんと先を歩いて行きます。
「ちょ、ちょっと待って」
先を行く彼を追いかけて、私も森へと入っていきました。
◇◇◇
泉のほとりで、王子とローズが仲睦まじく談笑しています。けれども、正直同じ会話を2回聞いても仕方ないので、私は2人にバレないうちに会場に戻りたくて仕方ありませんでした。
(ねぇ、戻ろうよ)
私は隣にいる銀狼に囁きます。
しかしながら、彼は熱心に2人を見つめるばかりで私の声など聞こえていないようでした。
(先に帰ってるから)
ま、1人でもいっか。
2回ほど魔界の道を行き来して、特に問題ないと感じた私は1人で帰ることにして、銀狼を置いて立ち上がり会場に引き返していました。
しかしながら、蚊取り線香があるところまで戻った時、急に後ろの方からがさりと音がしたのです。
「銀狼?」
一瞬どきりと私はしましたが、私は置いてきた彼も戻ってきたのかと思って、そう言いました。
すると後ろから、
「リーファ?」
驚いたような王子の声が聞こえたのです。どうして彼がいるのだろう。ローズと一緒のはずでは?
私は状況がよくわからなくて、身体が凍りついたように固まりました。
「あぁ、リーファ来てくれたんだね。ずっと探してたんだけどみんな仮面を被ってるから、なかなかわからなくてさ」
そう言いながら、彼は私を後ろからそっと抱きしめました。ふわりとバニラのような甘い香りが鼻腔をくすぐり、彼の柔らかな金髪が私の耳をくすぐります。
「会いたかった…」
そう言うと、彼は私に回した手の力を少し強くして、肩に頭を埋めました。私は薄い夏仕様のドレスの生地越しに彼の体温を感じて、ドキリとしました。
こ、これはどういう展開なのでしょうか。




