23.機転
「ほら、こっち向いて」闇夜に耳障りの良い声が響きます。
その声に促されるように、私は彼の方を振り向きました。夜の暗闇でも美しい金髪は目立ち、仮面の下から見える深いグレーの色の瞳は優しげな眼差しで私を見つめます。
「ようやく、私を見てくれた」彼は嬉しそうにそう呟いて、そっと私の頬に手を当てました。私はなぜだが身動きが出来ず、彼の動きをただ見つめるのみでした。
そうして、彼は私の方にそっと顔を近づけて…
その瞬間、バンッと森の奥の泉の方で花火のような音が上がりました。私はハッとしてそちらを向きます。
夜空に上がる綺麗な金色の花火。
この夜会って花火もあがるんだ、と内心驚きながら再び前を向くとそこには王子の姿はありませんでした。
「リーファ!」後ろから声が聞こえて、銀狼が森の奥から走ってきます。
「ごめんな。俺が夢中になってたせいで、一人で帰して。怖い思いしたよな」
そう言って、ちらっと私の肩の方に視線をやります。
私は彼の発言の意図が分からず、首を傾げて肩に手をやります。今日は暑かったため、少し胸元が開いたドレスを着ていたのですが、手に触れた肩はいつも通りでした。
「君が王子に抱きしめられているところを見てなんか変やと思ってん。だって、君は全然王子に興味なしって感じやったし。すぐに浄化したるからな」
そう言うと、彼は光の魔法の一つである浄化魔法を唱え始めました。
「え、えとなんか私の肩おかしいの?」
状況がよくわからなくて、私は尋ねます。
「マリオネットの術。短期間だけ対象の動きを封じることができるもので、君の肩にその印がつけられてる」
彼は手早く呪文を唱えながらそう言いました。
浄化の後、二人で会場に戻りながら私はいつこれが付けられたのか考えていました。そういえば、あれから花火が一つも上がっていません。
「花火って一度だけなのかな」
「あれ、俺やで」
「もしかして、私を助けてくれたの?」
彼は返事はしませんでしたが、ちらりと私を見つめました。そして、
「俺はあくまで王族側の人間やからな」
とポツリと呟きます。しかしながら、会場にたどり着いていざ中庭から会場に入ろうとした時、
「なんかあったら、俺に言うねんで」
彼はぽそりと呟いたのでした。




