20.恋心
仲睦まじそうに見つめ合う二人の後ろで、私たちは岩陰に隠れたまま静かに見つめ合います。
た、確かに私は転生者だからこの世界の人間じゃないわ、じゃ、目の前にいる人は一体何者だっていうのかしら?
そんなことを考えながら、彼と繋いた手が冷や汗で妙にべたついてきていることに私は気づきました。
あなたは一体何者? と私が囁こうと口を開くよりも早く、銀狼は口パクでこう言いました。
(キミハマモノ?)
(ニンゲン)
彼をちらりと見てそれだけ答えると、私はとりあえずこの問題は置いといて、前方に再び注意を向けました。
「それにしてもさ、どうしたらリーファに好かれるかな。推しても引いてもだめなんだ」
「そうねぇ。そうやって駆け引きをしようとするからダメなんじゃない? あくまで婚約者として振る舞うのよ」
王子の頬を優しく撫でながら、ローズはそう言います。彼女に触れられてうっとりしたような顔をした彼は、その手を掴んでそっと口付けしました。
「君はどこからみても完璧だね。リーファと似ているのは瞳の色くらいだ。君の美しさを閉じ込めておけるなら、僕はなんだってするよ」
「もう王子ったら。じゃあ早いところあの女の恋心を手に入れてね」
そう言いながら二人は怪しげな笑みを浮かべて微笑み合います。
このまま見ていたいのですが、見つかっては困るので私はそろそろ帰ろうと思い隣を見ました。
銀狼は食い入るように二人を見てましたが、私に気づくと頷きました。
◇◇◇
会場に戻ってきた私たちは、お互いに服に小枝などがついてないか確認した後、仮面を深くかぶり直します。
「今日のことは誰にも話したらあかんで」
「あなたこそ」
私はそう言いながら、彼をちらりと見ます。彼は何か考えているように見えました。
「俺は王子の子守役だから彼が暴走しないように止めなくちゃいけないんだけど、今回ばっかりはイマイチ全容が掴めないんだよな」
中庭に面したバルコニーにもたれかかれながら、ポツリと銀狼が言いました。
「恋心がどうとか言ってたし、私が王子に惚れたふりをしたら何かわかるかも」
二人の会話を思い出しながら、私は言います。
「"ふり"か。王子も王子やけど、君もなかなか割り切った人やなぁ。ところで、何で俺ら魔界に行けたんやろう」
「さぁ」
さすがにここで転生とかの話をするのは躊躇われました。
「シャオたちはこの夜会には来てないの?」
そもそもここは王子の別荘であり、本来王子とその友達が夏季休暇で訪れていたはずです。
「あぁ。お酒に弱いルークがうっかりウィスキーボンボンを食べちゃって寝てしまったから、控えの部屋に二人ともいるよ」
ついでに場所も教えてもらい、私はそこへ向かいます。
それにしても推しと手をつなぐなんていうことが出来たのにも関わらず、王子とローズの企みが気になって仕方ありません。
ゲームにはない展開が次々と起こり、何が正しい選択肢なのだろうと私は思ったのでした。




