18. 2人の行先
「静かに。後をつけるで」
後ろから私の口を塞いだ人は、そう言いました。
私が慌てて振り向くと、銀髪の男性が後ろに立っていました。しかし、他の人々と同じように仮面をしているため、表情までは見えません。
「銀狼?」
仮面の男性はこくりと頷きます。
正直、王子が泉でローズとよろしくやっていようがあまり興味はないのですが、急にローズに対する彼の態度が変わったことには興味がありました。
「明かりはつけたらあかんで。目立つから」
そういうと彼は私が転ばないようにか、そっと私の手を取ると暗い庭を森の中に向かって歩き出しました。
が、その時、
「っ!」
私は何かにつまずきました。そして、慣れない高いピンヒールを履いていたこともあり、上手く態勢の立て直しが出来ず、そのまま私は銀狼のほうに向かって倒れ込みます。
ドサッ
2人して地面に倒れ込みましたが、彼が上手く抱きとめてくれたため、私はどこも痛くはありませんでした。
図らずも彼の上に馬乗りになってしまった私は、立ち上がろうします。
しかし、
「婚約者に愛想をつかされそうやから、さっそく次の相手を誘惑か?」
仮面の下にみえる、薄くて上品な口元を少し歪めて彼は言います。
今まで気づかなかったけど、意外とこの人ヤバいやつかもしれないと私はこの時思いました。
「冗談やって。あれにつまずいたんやろ?」
そう言って、私をそっと抱えて起き上がりながら彼は私たちの足元を指さしました。
そこには、前世でいう蚊取り線香のようなものが立てかけてありました。
「これ、どうやら魔界の結界が張ってあるみたいや」
ぐるぐるとした「蚊取り線香」をつまみ上げながら、彼は言います。
「結界?」
「君はうたた寝してたから、覚えてへんかもしれないけど、貿易学の授業で習ったで。これを使って一時的に魔界とこの世界をつなぐのさ」
確かにそんな話はチラと聞いたことはありましたが、あまり詳しくは知りませんでした。
「でも、問題は何でそんなことする必要があるかなんだよなぁ。とりあえず行ってみる?」
カフェにいくようなノリで、魔界への誘いを彼はかけてきたのでした。




