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転生令嬢の推しは婚約者の側近  作者: 雪入りんご
2.疑惑の果実編
17/23

17.夜会

夏至の日に開かれる夜会は、人々がそれぞれ仮面をつけて一晩中踊りあかします。


そして、男性は気に入った女性に花を渡し、女性がそれを受け取ったら二人の縁は永遠に結ばれると聞いています。


この日、ゲームの世界では別荘イベントとして、王子が悪役令嬢を差し置いてローズに花を渡そうとしたので、悪役令嬢は怒って彼のキスを奪うのです。


というか、今考えて見たらゲームの中の王子様って気分屋なタイプですね。


だって、婚約者がいるのに他の女性に堂々と言い寄っていることになりますから。


「一曲、いかがですか」


他の人からあまり見えないようにカーテンに隠れながら壁際に立っていたのですが、突然横から声を掛けられました。


振り向くと、目の周りから鼻を覆う仮面を付けた群青色の髪の毛の男性がいます。


これは、誰だろう...


学園内でも見たことのない髪色です。しかしながら今日はあくまで正体を明かさないことがマナーなので、髪色を変えるくらいは誰がやっていてもおかしくはありません。


一応ダンスの誘いを断ることはご法度ですので、見つかってしまった以上私は応じることにしました。


音楽に合わせて私たちは踊ります。相手のエスコートは完璧でした。加えて、踊っている最中は何も話さないため、私も気楽に会場内を見渡しながら踊ることができました。


ダンスが終わると、男性は優しく私の手を離します。あまりに何も話さないので逆に興味が湧きましたが、相手のことについては尋ねてはいけないので私もお辞儀だけして彼と別れました。


◇◇◇


ずっと会場内にいるのも何だか疲れたので、会場から少し離れて私は中庭へと出てきました。


今日は本当は来るつもりはありませんでしたが、何事もなく終わりそうで私は安心していました。


この王子の別荘の中庭は森へと繋がっており、奥へ進むほど暗くなってきます。


少し明かりでもほしいな、と感じて明かりを灯す魔法を使おうとしたら、前方の森の方から声がかすかに聞こえてきました。


私は手近な茂みにさっと身を忍ばせます。


「...は、.....え....の?」


声が途切れ途切れに聞こえてくるので、私はもう一つ前の茂みにさっと移って耳をそばだてます。


「この花を受け取ってほしんだ、ローズ」


「あら? 婚約者"様"がいるのに、いいの? レオ?」


「あんなツンケンしている女より、君の方がいいんだ」


私の勘違いでなければ、この世界の王子は多少私に好意を寄せてくれていたはずです。


でも王子がこうなった以上、私は心置きなく側近の方にアプローチできそうです。


「森の奥に小さな泉があってね、そこに映る夜空がとてもきれいなんだ」


王子はそう言うと、小さな花を持つローズの手を引いて森の奥へと消えていきました。


さて、二人も立ち去ったし会場に戻ろうかなと思って立ち上がると、後ろからピトリと誰かに私は口を抑えられたのでした。


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