16.招待状
「それってオズヴェルト家のアイリスだったりする?」
私は微かな記憶を頼りに、ゲームの登場人物を振り返ります。
「そうですわ。百年程前に現王家から分かれる形で分家として独立。今では金融業を支配し、貴女とともにレオ王子の婚約者候補に挙がっていた...」
「そうなの?」
正直どのようにして自分が婚約者に選ばれたのか私は知りませんでした。
なぜならば、この世界はゲームのストーリー通りに進行するもの思っていた幼い私は、将来婚約破棄をされるにしろ、王子の婚約者として「一時的にであれ」自分が選ばれるのは当然だと思っていたからです。
「まぁ。ご自分が選ばれてて、どういう経緯で選ばれたのかご存じなかったの?」
あきれたようにシャオはそう言って、残っていたカフェオレを飲んだのでした。
◇◇◇
「夜明姫は本当に勉強熱心だねぇ」
学園が夏季休暇となり屋敷に一時的に帰宅した私は、早めに城から戻っていた父の隣で各貴族たちの家系を記した書物を読んでいました。
「お父様、その呼び方はやめてっていったじゃない」
「そうだったね、リーファ」
父は悪びれもなくさらりとそう言うと、難しい顔をして再び書類を書き始めました。
「あら、リーファここにいたの?」
柔らかな栗色の髪の毛をふんわりと巻いた、優しそうな空色の瞳をした女性が部屋に入ってきます。
「お母様。私さっきいったはずよ?」
「そうだったかしら?」
ふと額に手をあてて母は考える仕草をした後、父の元に行き封筒を手渡します。
「そう言えば、リーファはレオ様の別荘行きには参加しなかったんだね」
封筒をペーパーナイフで開けながら父は少し寂しそうにそう言いました。
「うん...。前から気になっていたのだけれど私以外に王子の婚約者候補はいたの?」
私はシャオと話して以来、気になっていたことを聞きました。
父は困ったようにポマードでセットした濃いブラウンの髪をくしゃりとした後、傍にいる母の肩に手を回しながらこう言いました。
「そうだね。でも最終的な候補に残ったのは僕の娘である君と、オズヴェルト家のお嬢様だったかな。それで、どうしようという話になり、当時はまだ幼かったけれど、レオ様自身に選んでもらうことにしたんだ」
「そうだったんだ」
「お父さんは個人的には君には自由に恋愛してほしかったんだけどね...。アリシアには色々と苦労をかけてしまったし」
「そんなことないわ、私は貴方と結婚できてすごく幸せよ」
「僕もだよ」
二人がいつものラブラブモードに突入しそうだったので、私は退出しようとしました。
すると、父が封筒の中身を私に手渡しながら、
「どうやら、例の王子様がお呼びみたいだ」と言いました。
そこには夏至の日に開かれる夜会の招待状があったのでした。




