15.告白
「それで、ここから花火を上げたらいいと思うんだ」
「えー、それ大丈夫なの?」
「親父に行ったら、そこは大丈夫だって」
「肝試しも楽しそうです」
ランチ時間にみんなが楽しそうに、休暇の予定を組んでいる横で私は黙々とご飯を食べます。
「ほんまに行かへんの?」
デザートのアイスを食べながら銀狼が聞いてきます。
「え、ええ。宰相の娘として学ぶべきことは多いので」
「たまには遊んだらいいのにー」
正直彼が行くのならば、行きたいのは山々ですがここは自衛という意味で我慢です。
ふと視線を感じてランチのプレートから顔を上げると、ローズがこちらを見ていました。
「リーファさんて、銀狼さんと仲が良いのですね。ほら、前も制服の替えを用意してもらってましたし」
彼女がにこにこと楽しそうに聞いてきます。
正直彼女の発言の意図がわからず、返答に困っていると、
「あれは、私が頼んだんだ」
ローズの隣にいた王子がすかさずそう言いました。
「あら、そうでしたの。レオ様ってやはり気遣いがあって素敵です」
その時、つんつんと私の服をシャオが引っ張ったので私は彼女の方に向きました。
「どうしたの?」
「どうしたも、こうしたも、私以前から貴女が心配だわ。リーファ」
彼女は声を押し殺して私に囁きます。
「婚約者にローズをあんなにべたつかせてていいの? とられちゃわよ」
「そのことなんだけど...」
◇◇◇
あの場で話すことがためらわれたので、場所を変えて放課後、以前王子たちと訪れたカフェに私たちは来ていました。
「あのね、シャオ。私前から話をしておきたかったことがあって」
そこで私は上ずる心臓を落ち着けようと、白桃茶に口をつけました。
シャオは眼鏡の奥の真剣そうな光を宿した瞳で、そんな私を見つめます。
「正直に言うと、私、レオ王子よりも銀狼推しなんだ」
この世界で初めて、私は自分の恋心を言葉にして発言しました。
この発言を聞いたシャオは目をまんまるくさせます。そしてしばらく大きな瞳をぱちぱちとさせた後、
「ちょっと、リーファ落ち着いて。相手はアイドルじゃないんだから推しも何も...」
あきれたようにそう言います。
「で、彼は貴女の気持ちを知ってるの?」
「言えるわけないよ」
「前からおかしいと思ってたけど、これでようやくわかったわ、なぜ貴女がローズにやきもちを焼かないのか」
そこまで言うとローズは、目の前のカフェオレをスプーンでくるくるとかき混ぜます。
「で、どうしたいの?」
「婚約を取り止めたいの」
「王族に対して婚約破棄を突き付けるなんて、聞いたことないわ。しかもそれをしたところで、必ずしも銀狼と結ばれるわけじゃないわよ」
「それはわかってるよ。でも、このままだと王子にも失礼だし...」
私はそこまで言うと、ぐびりと白桃茶を飲みほした。
ゲームの世界なら選択肢で色々状況を変えられますが、こと現実の世界となると様々な要因が重なり、物語のように純粋な恋心だけで動くことが難しいのは承知しています。
「だけど、王子だってローズと一緒にいてまんざらでもなさそうだし。だから、別にいいんじゃないかなぁ」
そうです。本来この世界では二人が正式な組み合わせなのです。
「それは、貴女にはそう見えているだけでしょう? 貴女、王子を狙うのがローズだけとお思いになって?」
「どういうこと?」
この世界はヒロイン視点からしかプレイしたことがなく、かついつも銀狼目当てで遊んでいたので、あまり他のキャラには注目していませんでした。
「王子の婚約者の貴女にはこれまで言わなかったけれど、王子、かなりの女性からアプローチされているわ。で、私前に見てしまいましたの」
そこまで言うと、シャオは意味ありげにこちらをちらりと見てきました。
「な、なにを?」
私も思わず身を乗り出して尋ねます。
「王子が王族とも肩を並べる有力な貴族の娘に言い寄られているところを。でも彼はきちんと断ってましたわ」




