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「レイのところに現れたってことは、なにかして欲しいことがあったんじゃないか?」

 凝り性の父は霊的な物事にも詳しい。

「生霊には、本人の強い思いが込められている。ただし、成就してしまうと、成仏してしまうから気をつけろよ。あと、魔よけの類のものの中には、生霊も嫌うものがあるから。とくに円や多角形には霊的意味合いを持っているものも多いからな。父さんもそんな美人の幽霊だったら会ってみたかったな。」


 あいかわらずのお気楽ぶりだ。が、気をつけろって言われても、空から突然降ってくる鳥の糞のようでよけようが無い。


 休みに、その事件のあった部屋に行って見た。火災の後はすっかりなくなっていたが、事故物件とあってかまだ借りてはいないようだ。

「部屋を見たいんですが。」

 看板にある連絡先に電話をした。

「すぐにご見学ということでしたら、5分ほどで担当が向かいますが。」

 軽そうな若い男の声がする。僕は父に教わったとおり、邪気払いの盛り塩をそっと敷地の四隅に目立たないようにほどこした。父がいったいどこから手に入れたのかわからないが、霊が見えるサングラスとやらをかけて、その場で待った。


「お客さん、ついてますね。この部屋、リフォームしたばっかりでね。調理器具も最新のIH。今決めてくだされば、リフォーム前の家賃で契約いたしますよ。敷金礼金も今だけなし。」

 若い営業はよっぽど契約したそうだ。まあ、時間をかけると事故物件だとばれるから、早くしたいのだろう。

 部屋の中もすっかり綺麗になっていて、当時のものは何もなさそうだった。

「まだ、最初のところなんで、他も見てから検討します。」

 そういって、帰ろうとドアを開けたとき、外に一瞬人影が見えたように感じた。

「そうですか。明日にはもう無いかもしれませんけど、残念ですね。」

 営業マンは明らかに嘘だろうと思われる捨て台詞をはいて去っていった。

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