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奈落

 マリに尋ねるべきかどうか、ずーと迷っていた。いままでは、中性的イメージだったから。しばらくの沈黙の後、意を決した。


「おい、一人で何してんだ?」

 不意に背後から甲高い女性の声がする。

「ふたり・・・。」

 そういいかけながら、振り返ると、金髪の背の高い学生が立っていた。

「あ、エレン。」

 僕は、驚いたがマリにあった時ほどの感動はなかった。

「また、3人揃った。」

 そうつぶやいた僕にエレンは不思議そうな表情を浮かべた。

「3人?二人しかいないけど。」

 そういわれて、横を見ると、先ほどまで居たはずのマリがいない。


「そうか、お前は受験前だから知らされてなかったんだな。」

 そういって、エレンはゆっくりと語り始めた。


 一般入試の僕とちがい、エレンとマリは推薦で早々と入学を決めていた。マリはロボット工学、エレンは経営学科。ところがその直後、マリの住んでいる部屋の前で火事が起こり、一人部屋で寝ていたマリは低酸素症で意識を失った。

 犯人はマリの兄へのストーカーをしていた女性で、どうやらマリを兄の交際相手で同棲していると思い込んでいたらしい。徐々に女性らしい格好も始めたころなので余計に勘違いされたのだろう。

 マリが未成年ということもあって、大きく報じられることもなかった。彼女はいまも病院で昏睡中だという。


「さっきまで、一緒にいたのは誰?」

「もし、本当なら生霊。だが、それは悪い兆候だ。生命力が弱っている。正確には、生きたいという意志が弱っているということだ。」

 僕は呆然となった。それは、ジェットコースターの天辺から急降下するよりも激しい衝撃から身を守るために、僕の頭は思考を停止してしまっていた。


 御伽噺であれば、姫を目覚めさせるのは王子の役目だ。でも、彼女の王子を探すといってもあてが無い。

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