表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ローグライク(ト)な異世界ライフ  作者: ke-go


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/4

第二話 最初の死

第二話 最初の死


草むらが、揺れた。


次の瞬間、異形の魔物が飛び出してきた。


四足の輪郭をしているが、その全身は硬質な殻に覆われていて、裂けた口から覗く不揃いの牙が生き物らしさを歪ませている。


「――っ!」


考えるより先に体が動き、俺は反射的に地面を蹴って逃げ出した。


枝が顔に当たり、足元がもつれそうになりながらも走り続けるが、背後の気配は一瞬で詰まり、その距離が致命的なほど近いことを理解する。


横から衝撃が来た。


「ぐっ!?」


体が宙に浮き、そのまま地面に叩きつけられ、息が強制的に押し出される。


起き上がる間もなく腕に重さが乗り、次の瞬間には殻に覆われた顎が食い込んでいた。


「があああっ!!」


骨ごと締め潰されるような圧力に、引き剥がそうとしても全く動かず、肉が裂ける感覚だけが鮮明に残る。


視界の端に、もう一体。


同じ形の影が滑り込むように近づいてくる。


「――っ!?」


避ける余裕はない。


体が押さえつけられ、背中が地面に沈む。


首元に影が落ちる。


硬い顎が、食い込む。


「……あ」


ここで終わると、理解した。


「……死にたく、ない……」


視界が途切れた。



気がつくと、俺は森の中に立っていた。


さっきと同じ場所で、同じ空気が流れている。


首に手を当てても傷はなく、体の状態は何一つ変わっていないのに、さっきの出来事だけがはっきりと頭に残っている。


「……戻ってる」


小さく呟く。


理由は分からない。


だが――さっき、確かに死んだ。


それだけは否定できない。


草むらが揺れる。


「――っ!」


考えるより先に体が動き、再び逃げ出す。


だが、結果は同じだった。


回り込まれ、倒され、押さえつけられ――


終わる。



気がつくと、また森の中に立っていた。


同じ場所。


同じ景色。


「……二回目」


短く呟く。


体は何も変わっていない。


だが、記憶だけが積み重なっている。


草むらを見る。


来るのが分かっている。


それでも――


逃げる。


結果は変わらない。


捕まる。


倒される。


終わる。



気がつくと、また森だった。


「……三回目」


同じ場所に立っている。


同じ空気を吸っている。


何も変わっていない。


「……いや、違う」


変わっているものがある。


自分の中だ。


さっきの“死”が、消えていない。


腕を噛まれたことも、押さえつけられたことも、全部覚えている。


なのに――


体は元通りだ。


傷もない。


痛みもない。


「……なんだ、これ」


理解が追いつかない。


だが、現実は変わらない。


草むらが揺れる。


視線だけ向ける。


そして――


また、終わる。



気がつくと、森に立っていた。


「……四回目」


小さく呟く。


足は、まだ動いていない。


草むらも、まだ静かだ。


その場で、止まる。


「……俺は、さっき死んだ」


言葉にする。


否定できない事実。


「それで、ここに戻ってる」


周囲を見る。


何も変わらない景色。


「体は元に戻ってるのに、記憶だけ残ってる」


一つずつ、確認する。


「じゃあ――」


少しだけ、間を置く。


「死んでも、終わりじゃないのか」


誰も答えない。


だが、その結論にしかならない。


草むらが、揺れた。


それでも――


まだ動かない。


「……なら」


ゆっくりと息を吐く。


「どう動くか、決めてから行く」


一歩、踏み出す前に、


思考を整える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ