表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS猫耳銃士戦記~俺が痩せれば魔王も倒せるらしい~  作者: 頑田むぅ
第二章『アルバベールの首輪』
PR
85/94

第067話「よろしいですよねはいイエス!」

 迎賓館の二階にある貴賓室は、砦の機能的な空気とはまるで別世界だった。

 厚い絨毯、落ち着いた調度、そして奥には専用の浴室まで備えられている。


 到着して間もなく、シャルルは数人のメイドに囲まれ、そのまま流れるようにこの部屋へ連れてこられた。まるで荷物の搬入でもされるかのような勢いだった。


「お風呂の準備は整っております。お着替えをお持ちいたしますが、お手伝いは――」


 そう聞かれた瞬間、シャルルは即答した。


「ネコ耳族のしきたりにより、全て一人でやります!」


 当然ながら、でまかせだ。

 メイドたちが一度引き下がると、ようやく静寂が戻る。


 ……とはいえ、落ち着く暇もない。


 旅館やビジネスホテルなら経験はある。だが、ここまでの部屋は初めてだった。

 妙に広い。妙に整っている。そして妙に居心地が悪い。


 視線は自然と浴室へ向く。


 湯気の立たない湯船。だが触れずとも分かる。温度は一定に保たれている。おそらく魔法だ。


 一通り見回したあと、シャルルは部屋へ戻り、姿見の前で足を止めた。


 泥に汚れた服。汗で乱れた髪。鏡の中には、完全にはっきり言って小汚い猫耳の少女が立っている。


「なあ、フェルさんや。ちょっといい?」


 軽く呼びかけると帽子の上から羽飾りが飛び出し、女神フェルネスへと姿を変えた。


「……尾本さんが何を言いたいのかは分かりますよ」


「それなら話は早い」


 鏡の中の自分を指さす。


「泥だらけだし、汗臭いし、今すぐ風呂に入りたい。しかし、問題はコレだ」


「えーっと……服のまま浴槽に飛び込む、とか?」


「さっきのメイドさん、着替えを持ってくるとか言ってたよね」


「言ってましたね。そして、この後はお偉い方々との食事会も控えているとかなんとか」


 一瞬の沈黙。


「こうなったら目を閉じてだな!」


 目を閉じ、汚れた服に手をかける。


「それだけは絶対ダメです! というか、しれっと薄目開けてるじゃないですか、このド変態!」


「許せ、広瀬! 俺は風呂に入る! 絶対に入る! もう限界だ!」


《シャルルっち……それはさすがに引くわー》


「誤解だ! 俺はさっぱりしたいだけなんだ! それと、未知への探究心……」


 コルセットスカートを力任せに引っ張るが、びくともしない。

 見ていて痛々しいほど、脱ぎ方が分かっていない。


「ちょっとアイリス! このバカを止めてください!」


《第二スキル【身体制御】がリミッター解除で倫理的に強制実行されます。

 ユーザーに代わり、アイリスがアバター・シャルルの全制御を行います。

 警告! 以降はユーザーの介入を全て拒否します。五感は全てカット!

 ――よろしいですよねはいイエス!》


「ノ、ノオオオオ!! てめぇ、アイリス――」


 言葉の途中で、ぷつりと尾本の意識が途切れ、シャルルはがくりと項垂れた。


次にゆっくりと上げた顔には軽蔑の色が浮かび、ジト目は鏡に向けられる。


「シャルルっちは、この後はペナルティでいいよね?」


「もちろんですとも。最大級でお願いします」


 女神とアイリスは、無言で親指を立て合う。

 その合意は、即座に実行されることとなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ