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第013話「ナンカ祈っといてください(後編)」

 金色の光が舞う中、女神フェルネスが一歩踏み出す。 風が彼女の長い髪を揺らし、純白のローブが淡く輝いた。 背後から降り注ぐ神々しい光が、彼女の輪郭を淡く縁取る。


「お待たせしました、勇者アヤトよ。

 この後は国境線に戻り、魔王軍残敵の殲滅をお願いします。

 その時には、このシャルルを連れていきなさい……」


 視線がシャルルを捉えると、周囲に光が降り注ぐ。


「彼は不完全ですが役に立ちます……たぶん?」


 神々しい光景の中で、女神の評価が軽い。


「〝不完全〟と〝たぶん〟は余計なんですけど」


 アヤトは確認するように女神を見やる。


「……やっぱり〝彼〟なんですよね?」


「よろしく、アヤトくん。君もなかなかしつこいね。俺は男だよ?」


 そう言って、シャルルは手を差し出す。


「はあ……」


 困惑した表情を浮かべつつも、アヤトはその手を握る。


《よろしく~ シャルルっち~》


 また、あの謎の声が脳内に響く。

 シャルルは思わず猫耳を押さえ、周囲を見回した。


「ど、どうかしましたか、シャルルさん?」


「さっきから、時々変な声が聞こえるんだけど、何なのコレ? この世界の常識?」


「僕には何も聞こえませんが……」


 アヤトに言われて、シャルルは女神に目を向ける。


「私にも聞こえませんね。幻聴でしょ。きっと」


「マジか。まさか猫耳が生えてきたせいとか?」


 シャルルはぴくぴくと猫耳を動かす。尻尾もゆらゆらと揺れた。


 ――はて? いつから猫耳や尻尾を動かす神経が備わったのだろうか?

 それどころか、むしろ猫耳と尻尾が無かった〝元の感覚〟のほうが不自然に感じてくる。


「あの……『生えてきた』ってことは、シャルルさんの猫耳は後天的なものなんですか?」


 アヤトがふたたび怪訝そうな顔をする。


「……そこは乙女の秘密だよ」


「……シャルルさんって、男の人なんですよね?」


「そうですが?! 男なうえに、おっさんですが?!」


 ムキになっているシャルルに、アヤトがさらに目を細める。

 女神は勇者ふたりのやり取りに大きなため息をつくと、ふわりと宙に浮かんだ。


「それでは勇者アヤトよ。猫耳族の銃士シャルルよ。アルヴァリス王国の勇敢な兵士たちよ――

 健闘を祈ります」


 光の柱に包まれたフェルネスが、静かに天上へと帰っていく。

 神聖な光が彼女の輪郭を包み、荘厳な鐘の音が響く。見渡せば、戦場にいる兵士たちは全員が跪き、祈りを捧げている。負傷兵の中には、涙を流し、救いを求めるように手を伸ばす者もいた。

 まるで宗教画のように荘厳な光景――もっとも、女神の行き先はマンションの自室で、目的は大学の課題を片付けることだったりするのだが。


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