第092話「同盟国会議か……」(2/3)
「シュラウザー殿、これからの会談に参加される面々について少し教えていただけますか?
お察しの通りですが、自分は、こういった会談には不慣れでして……」
言葉に出した後で、かつての敵の将校に対してこうした頼みごとは適切なのか、少し迷った。だが、今更引っ込めるわけにもいかず、視線をシュラウザーに向けた。その迷いを見抜いたのか、シュラウザーは温かい笑顔を浮かべる。
「かしこまりました。では、参加者について報告する前に、今回の会談について簡単にご説明させていただきます。まず、今回は大きくは四つの議題について話し合う事になります」
シュラウザーは少し間を取ってから、冷静に、そして一語一語選びながら続けた。
「第一の議題は、先日の南エンサリア砦での戦闘結果についてです。ここでは、戦況の詳細な報告を行いますが、特に重要なのは魔王軍も弓矢による魔法攻撃を行ってきたという点になるでしょう」
ライウスはその言葉に思わず表情を強張らせた。弓矢による魔法攻撃といえば、それはエンサリア共和国だけが持つ独自の技術であり、他国に対して圧倒的な優位性を保ってきた切り札でもある。それが、まさか魔王軍によって使われるとは――
「この情報を会談の場で公開する理由は明確です。我々エンサリア共和国からの技術の流出や供与が一切行われていないことを同盟諸国の方々に説明する必要があります。また、同盟国が魔王軍から魔法攻撃を受けたとしても、それが我々の責任ではないと明言しなければなりません」
ライウスは、シュラウザーの冷静な語り口に耳を傾けながらも、心中に重くのしかかる思いが渦巻いていた。圧倒的な軍事力を誇っていたエンサリア共和国の魔法技術が、敵に奪われた――それを認めた上で、不信を払拭しなければならないという現実。国の威信を守るために、今回どこまでを公開し、どう説明するか。重要なのは、誤解を招かないよう細心の注意を払うことだろう。
「第二の議題は、クワリオス鉱山砦が陥落した件について。この議論は、今後の防衛戦略に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。また、物流にも波及し、経済的な問題を孕んでいるのは言うまでもありません」
シュラウザーが再び息をついた。クワリオス鉱山から採掘される青結晶は各国の重要な資源であり、その輸送のために国家間を結ぶ大街道が整備されている。その影響で発生する経済問題については、士官学校での座学が常に赤点だったライウスでも、容易に思い描くことができた。
「第三の議題は、第二の議題に関連して、魔王軍にエンサリア共和国の要人が人質に取られている件です。この問題は極めてデリケートであり、慎重に話し合う必要があります。ただし、魔王軍からは『明日までに返答せよ』という期限を提示されており、時間的な制約が大きい状況です。そのため、各国の意見を伺う余裕がないまま、エンサリア共和国として独自に決断を下す形となるでしょう。本日はその報告をさせていただく場とご理解ください」
シュラウザーは一瞬、静かに目を閉じた。魔王軍からの一時休戦の要求をエンサリア共和国が受け入れる、という話は既に耳にしている。その弁明であることも承知していた。仮にこれがアルヴァリス王国の立場だったとしても、人質の命がかかっている以上、同様に一時休戦の要求を受け入れていたに違いない。
「最後の、第四の議題は、勇者様の広範囲攻撃の再使用に関する内容です。これには、儀式用短剣を用意するか否かという点が焦点になります。この議題も、非常に高度な議論を要します」
これまでの自分であれば、単純に「戦力になるなら渡せばいいではないか」と答えていただろうが、あの大爆発の痕跡を見れば、各国が警戒する気持ちも分からなくはない。
――シュラウザーのひとつひとつの説明が、ライウスの胸に重く響く。
会談の内容が、自分の想像以上に重大であることに気づき、改めてその責任の重さを実感した。




