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TS猫耳銃士戦記~俺が痩せれば魔王も倒せるらしい~  作者: 頑田むぅ
第二章『アルバベールの首輪』
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第091話「同盟国会議か……」(1/3)

 西アルヴァリス砦の警備隊長であるライウスは、南エンサリア砦の最上階にある大広間を見回しながら、どうにも馴染めない居心地の悪さを覚えていた。


「同盟国会議か……」


 背後では、会談の準備が慌ただしく進み、石造りの壁にはエンサリア共和国、アルヴァリス王国、カルマラ自由都市国家、レーデベリア帝国の四カ国の国旗が並ぶ。

 それらは対等な同盟関係を象徴するための演出なのだろう、とライウスも理解はしている。だが、それを眺めていると、胸の奥に奇妙なざわつきが生まれる。それは、ここが同盟国の会議の場であると分かっていても、どこかで「戦場」の延長にいると感じてしまうからだ。


 ――10年ほど前まで、アルヴァリス王国とエンサリア共和国は剣を交え、互いに命を奪い合っていた。

 その戦火は、国境沿いの村々に深い傷跡を残し、癒えてはいない。

 

 ライウスが士官学校在学中に休戦協定が結ばれたおかげで実際の戦場に出ることはなかったとはいえ、戦火の記憶は未だ鮮明だ。魔王軍と戦うために同盟は結んではいるものの、かつて敵と呼んだ者たちの砦の中に身を置く感覚は、思った以上に重苦しい。


 もっとも、それはエンサリア側も同じだろう。忙しなく動き回る文官の中には、戦争を経験したと思われる年代の者たちもおり、彼らから送られる視線には敵意とまでは言えないが、わずかに刺さるような冷たさも感じられる。


 ライウスは会場設営の準備の邪魔にならぬよう窓の側に移動する。窓の外は厚い雲に覆われ、薄暗い光が室内に差し込む。

 そう言えば、最後に太陽を見たのは何日前だっただろうか?とぼんやり考えながら、視線を地平線に向ける。そこには、つい数日前に勇者アヤトが放った広範囲攻撃魔法の爪痕が黒く残っていた。地表は黒く焼け焦げ、爆心地を中心に大地はまるで巨大な手でえぐり取られたかのようだった。その光景は、自然界のいかなる力とも違う、異質な破壊を示していた。


「これが、たったひとりの人間が使った魔法の跡とはな――」


 思わず呟いた言葉は、頬を撫でる冷たい風に乗って消える。

 敵にとっては恐怖そのものだろうが、味方である自分たちですら畏怖を覚えざるを得ない。


「ライウス様、こちらにいらっしゃいましたか。会場の準備が整いましたら、お声がけする予定でしたのに……」


 振り返ると、南エンサリア砦の警備副隊長シュラウザーが、温和な笑顔を浮かべながら近づいてきた。

 彼の癖なのか、伸ばした白いヒゲを指先で撫でる仕草が目につく。その穏やかな態度と、どことなく牧羊犬を思わせる落ち着いた佇まいに、ライウスは自然と親しみを覚えた。かつては敵同士だったことを忘れてしまいそうなほどだ。


「シュラウザー殿、自分のことはライウスで構いませんよ。どうもじっとしているのが苦手でして……会場の準備を手伝おうとしたのですが断られてしまいました」


 ライウスは苦笑いしながら言葉を続けた。こういった高度に政治的な話し合いの場は、どうにも苦手だ。むしろ、こうした役目は知恵者であるリーナ副隊長が果たすべきだと思うのだが……彼女からは「いい加減に慣れてください」と怒られてしまった。


「では、今後はライウス隊長とお呼びさせていただきます。ライウス隊長は、何と申しますか……率直に申しますと、気さくで素直な良い御仁(ごじん)ですな」


 シュラウザーが苦笑いを浮かべた。自分のような威厳とは無縁の凡骨が西の砦を守っていれば、南の砦を守る副隊長も不安に思うのは当然だろう。少し申し訳ない気持ちを抱えつつ、リーナがここにいたらまたスネを蹴られていただろうと思い浮かべる。襟元を正し、会談に向けて心を落ち着けなければ、と意識を切り替えた。


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