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TS猫耳銃士戦記~俺が痩せれば魔王も倒せるらしい~  作者: 頑田むぅ
第二章『アルバベールの首輪』
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第083話「デスヨネー」

 高校の空き教室では、児童たちと講師役の生徒たちが机を挟んで向かい合っていた。

 簡単な自己紹介を終えた後、それぞれが今後の学習方針について話し合いを始めている。


「さてさて、牧村さんの目標は算数の底上げってことだよね?」


 綾人は『学習プロフィールシート』に目を通しながら尋ねた。


 知世は笑顔で頷く。


 ――だからそう書いてるだろうが!


 心の中で毒づいた。


「大学附属中学の受験が目標か……」


 綾人がふと真剣な表情になる。


 ――え? 何? どゆこと?


「私じゃ、難しい……ですか?」


「ん? ああ、ごめんね。そういう意味じゃなくて――」


 綾人は慌てて手を振った。


「僕も附属中学からこの高校に来たんだよ。だから、僕なら牧村さんの力になれるんじゃないかなって思ってね。受験合格までの道筋とか攻略法を考えてた」


「ホントですか!」


 思わず身を乗り出していた。


 ここは大学附属とは系列が異なるものの、有数の進学校だ。

 附属中学出身の講師に当たれば理想的だとは思っていたが、児童側から講師を選ぶことはできない。

 半ば運任せだっただけに、これはかなり幸運と言っていい。


 ――講師が宿敵であることを除けば。


 周囲の視線が集まっていることに気づき、知世は咳払いして座り直した。


「あの……それで、私が苦手なのが算数で……」


「図形と文章問題だね? ここがネックになるのは出題者側も分かってるから、そこの配点が大きいんだよ。計算問題が得意でも、図形と文章問題ができないと合格は難しい」


『デスヨネー』


 そう言いたくなる気持ちを飲み込みながら頷く。

 誰が貴様と馴れ合ってやるものか。


「それで、このネックになる算数に関しては、まずは牧村さんにあった勉強スタイルを探していこうと思うんだ。これは僕個人の意見なんだけど、最適な勉強法って個々人によって違うと思うんだよ」


「勉強方法、ですか?」


「例えば、ある人は問題を解く数をこなすことで理解を深める――言うなれば『手で覚えるタイプ』ってやつかな。また、ある人は問題を解く過程や理由を追求するやり方で勉強するだろうね。そういうのは『理論追求タイプ』っていうのかな」


「なるほど」


 言いたいことは分かる。

 だが、それなら気になることがあった。


「アヤト先生は、どのタイプなんですか?」


 綾人は一瞬きょとんとした後、小さく笑った。


「え? 私、何か変なこと言いました?」


「ごめん。なんか、先生って言われるのがくすぐったくて」


「えっと……じゃあ、なんて呼べばいいんですか?」


「広瀬でも綾人でも好きに呼んでくれて構わないけど〝先生〟はちょっと勘弁してほしいかな」


「いや、さすがに呼び捨ては、ちょっと……」


 シセの時なら平気だが、この場合は少し抵抗がある。


 二人して考え込んでいると、小宮先生がふんわりとした笑顔を浮かべながらやって来た。


「だったら〝広瀬先輩〟っていうのはどうかしら?

 牧村さんが附属中学に合格すれば、本当に先輩になるわけですし」


 なるほど。

 それは悪くない。


「さてさて、それで小学生時代の〝広瀬先輩〟はどういうスタイルで勉強してたのかしら?」


「そうですね。僕は他人に教えることで自分が学ぶ『教師タイプ』って所ですね。自分で自分に問題を作ってみたり、友達に勉強を教えたりするようにして学習していましたよ。今の勉強スタイルも同じですけど」


 知世は唸った。

 つまり、普段から人に勉強を教えている。

 しかも、自分が目指す附属中学の卒業生。


 ――敵であることを除けば、講師としてはかなりの優良物件なのでは?


 知世は机の下で、誰にも見えないように小さくガッツポーズを作った。


   * * *


 昼休みが終わり、営業部では再び慌ただしさを取り戻していた。

 営業部長の米田原よねたばるは、自席でモニターを睨みながら眉をひそめる。


 取引先から「メールが届いていない」と連絡を受け、送信履歴を確認したところ、いくつかの重要なメールが先方へ届いていないことが分かったのだ。


「なんでメールが届く相手と届かない相手がいるんだ?」


 さらに調べると、ファイルを添付したメールだけが届いていないらしい。

 メールソフトの仕様が変わったのか。誰かが設定を触ったのか。

 ITに詳しくない米田原には見当もつかない。


 周囲を見回すと、社員たちも慌ただしく動いていた。

 電話をかける者。

 キーボードを叩く者。

 状況確認に追われる者。

 隣の席の新人社員も、不安そうに周囲を見回している。


「君もメールが送れないのか?」


「それが……メールだけじゃないんです。そもそもネットにアクセスできたり、できなかったり」


「これは困ったなあ。すぐに尾本くんに原因を調べてもらって――」


「尾本さんなら納品に行かれてますよ。開発室には誰もいません」


「……そうだった」


 不意に、今朝の新聞記事が米田原の脳裏をよぎる。


 ――大病院を襲ったランサムウェア事件。

 サーバーがウイルスに感染して患者の個人情報を人質に取られ、海外のハッカーから巨額の身代金を要求されたとかいう内容だった。


「まさか、うちの会社もコンピュータウイルスに?」


 誰にともなく呟いてみたものの、不安の種は消えない。米田原は小さく息を吐き、冷静を装おうとしたが、背筋を伝う冷や汗を止めることはできなかった。

第083話目ですが、アップロードされているお話は100話目になりました。


そして今日は七夕ですね。

恋愛成就の日や、ジョン・スミスの日(?)として有名ですが、もともとは「乞巧奠きこうでん」という、技芸の上達を願う行事の側面もあるそうです。

 裁縫や書道の上達を祈ることが代表的ですが、本質的には「手仕事や学問、芸術の腕前が向上しますように」という願いの日とも言えるのかも。


 よって、現代であれば――


・小説執筆が上達しますように

・最後まで書き上げる力がつきますように

・読者に届く文章が書けますように

・毎日少しずつでも書き続けられますように


といった願いも、七夕の精神にぴったり合っているかもしれませんね。

以上、後書きというより雑談でした。


ここまで読んでくださって、ありがとうございます!

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