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猫だと言われても犬は犬
それからというもの、隣人はたまに顔を出すようになった。
理由は、だいたいどうでもいい。
「ゴミ出しの日、間違ってますよ」とか。
「自転車、少しはみ出てます」とか。
だが毎回、視線は犬に向かう。
今日は、ソファの背もたれの上。
次の日は、冷蔵庫の上。
その次は、なぜかドアの上。
「……器用ですね」
「運動神経いい犬なんで」
私は誇らしげだった。
隣人は、もはや訂正しない。
ある日、隣人はぽつりと言った。
「……猫砂、必要だったら余ってますけど」
「犬なんで大丈夫です」
「……そうですか」
(この人、心折れるの早いな)
犬は少し同情した。
夜、私は犬を撫でながら話しかける。
「なあ、お前、猫って言われること多いけどさ」
犬は喉を鳴らした。
ごろごろと。
「気にするな。俺は分かってるから」
(それ、猫の音)
犬は、あえて訂正しなかった。




