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犬だと思って拾ったら、どう見ても猫でした  作者: 櫻木サヱ
犬は散歩を拒否する

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5/5

隣人はすべてを理解している

 事件が起きたのは、平日の昼だった。


 私は有給を取っていた。

 理由は単純で、犬の様子を見るためだ。


「拾ったばかりだしな。環境変わると犬も不安になるし」


 犬は今、洗濯機の上にいる。


 正確には、洗濯機の上に置いたカゴの中に、完璧に収まっていた。


(ここ、風通しがいい)


 私はコーヒーを飲みながら、満足げに頷いた。


「落ち着く場所見つけたみたいだな」


 そのとき、インターホンが鳴った。


 ピンポーン。


「……?」


 心当たりはない。

 宅配の予定もない。


 ドアを開けると、隣人が立っていた。


 年齢は私と同じくらい。

 無表情で、手には回覧板。


「すみません、回覧板です」


「あ、ありがとうございます」


 受け取ろうとした、その瞬間。


 隣人の視線が、私の肩越しに部屋の中へ向いた。


 正確には、洗濯機の上を見た。


 数秒、沈黙。


「……猫、飼い始めたんですか?」


 私は笑った。


「犬ですよ」


 即答だった。


 隣人は、もう一度洗濯機の上を見る。


 丸い背中。

 しなやかな尻尾。

 こちらを一瞥して、ゆっくり瞬きする目。


 完全に、猫。


「……いえ、猫に見えますけど」


「よく言われるんですよ。犬でも色々いるじゃないですか」


 隣人は、口を開きかけて、閉じた。


 そして一度、深呼吸をした。


「……そうですか」


 理解した顔だった。


 諦めた顔、とも言う。


(あ、この人、もうダメだって判断したな)


 犬は、心の中で冷静に分析した。


 隣人は回覧板を渡し終えると、少し間を置いて言った。


「……吠えません?」


「全然。お利口なんです」


「……散歩は?」


「行きません」


 隣人は、もう一度黙った。


「……そうですか」


 その声には、すべてが詰まっていた。

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