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輝く君へ  作者: P4rn0s


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14/15

いつも通りだよ

僕たちは、口に出さずともお互いのリズムを知っていた。

「今日も一緒に帰れるかな」と思いながら昇降口に向かうと、柱の影に彼女がいることもあれば、いないこともある。

その偶然に一喜一憂するのが、いつの間にか僕の日常になっていた。


その日、彼女は柱の影に立っていた。

僕を見つけると、少し微笑んで小さく手を振る。

いつも通りの笑顔なのに、胸に刺さる感覚は変わらなかった。

心の奥で、昨日彼女がいなかったことを思い出し、胸の中で小さな棘が痛む。


「……久しぶりだね」

「うん、ちょっとだけね」


彼女の声は軽やかで、いつも通りの調子。

でも、どこかほんの少し距離を感じる。

昨日も、先週も、僕たちはこうしてすれ違いながら、隙間を埋めていたのかもしれない。


坂道を下る。

夕陽が二人の影を長く伸ばし、風は穏やかに吹く。

僕は彼女の横顔を見ながら、言いたいことが頭の中で渦巻くのに、言葉にできない自分に気づく。


──なんで、伝えられないんだろう。


そのもどかしさが、胸の奥でずっとくすぶっていた。

もし僕が一歩踏み出して「一緒に帰ろう」と言ったら、関係は変わってしまうのかもしれない。

それを恐れて、僕は黙って歩く。

彼女も同じだろうと思う。


歩きながら、僕たちは何気ないことを話す。

今日見かけた小さな出来事、通り過ぎる猫のこと、ほんの些細な話題。

内容は軽くて取るに足らないのに、耳に残る声は、甘く、心地よく、そして少し切ない。

それは二人だけの、儚くて柔らかい時間だった。


でも、放課後が続くにつれて、僕の中で何かが変わってきた。

彼女と一緒にいる瞬間の幸せは、以前より少し薄くなり、淡く、日常の一部になってしまう。

甘いのに、当たり前になっていく。

その矛盾が、胸に小さな痛みとして残る。


ある日のこと。

坂道を下りながら、彼女がふと立ち止まり、上を向いて小さく息を吐いた。

「……今日は、一緒に帰れてよかった」

その言葉は、僕に向けられたのか、それともただの独り言なのか、分からなかった。

でも、僕はそれだけで胸がいっぱいになった。


翌日。

昇降口に向かうと、柱の影には彼女はいなかった。

誰かと話していたわけではない。

ただ、そこに立っていなかっただけ。


昨日の時間は、偶然だったのかもしれない。


それでも僕は歩く。

坂道の途中で足を止めて、風を吸い込み、夕陽を見上げる。

胸の奥には、昨日の言葉がまだ残っている。

甘くて、切なくて、少し痛い。


こうして、僕らの放課後は少しずつ薄れていくのだろう。


でも、まだ完全には消えていない。

彼女の笑顔も、声も、横にいる感覚も。

すべては淡く、溶けかけているけれど、確かにそこにある。


この薄さこそが、僕たちの関係の今の姿なのだと、僕は知っていた。

特別なものは、日常になるといつか薄れる。

でも、その薄さの中で過ごす時間も、やはり甘く、柔らかい。


僕はまた、明日も坂道に向かうだろう。

柱の影に彼女がいるかどうかは分からない。

でも、期待せずにはいられない。

甘く、切なく、消えそうな日々を、まだ手にしたいと思うから。

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