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輝く君へ  作者: P4rn0s


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12/15

ただ、昔のように

いつもの時間。

いつもの昇降口。

いつもの影。


そこに、いつもいるはずの君がいなかった。


下駄箱の前で靴を履き替え、何気なく顔を上げる。

いつもなら少し離れた柱の影に、彼女がいるはずだった。

その視線を感じて、僕は歩き出すのが習慣になっていた。


けれどその日、柱の向こうには誰の姿もなかった。


──あれ?


一瞬だけ胸がざわついた。

もしかしたら今日は忘れたのかもしれない。

急いで帰らなきゃいけない用事があるのかもしれない。


僕はそう思い直して、しばらくその場に立ち尽くした。

だが、どれだけ待っても彼女は現れなかった。


仕方なくひとりで昇降口を出る。

夕陽に照らされた坂道を歩くのは、久しぶりに感じた。

周りの部活動の声が妙に遠くて、風の音ばかりが耳に残った。


──こんなに寂しい道だったっけ。


彼女がいないだけで、坂道はただの通学路に戻ってしまった。

重たい鞄の紐が肩に食い込み、前を歩く人の影が長く伸びる。

その一歩ごとに胸が空洞になっていくようだった。


翌日、教室で彼女と目が合った。

けれど彼女はいつも通り友達と笑っていて、僕には何も言わなかった。

僕も声をかけることはできなかった。


放課後。

下駄箱に向かうと、今度は彼女がそこにいた。

何事もなかったかのように柱の影に立っていて、僕を見つけると軽く手を振った。


「昨日、友達と一緒に帰っちゃった」

歩き出すとすぐに彼女がそう言った。

「ごめん、言っとけばよかったね」


僕は首を振った。

「いや、大丈夫」

「ほんと? なんか急に約束すっぽかしたみたいで」

「そんなことないよ」


言葉はそれだけだった。

彼女はすぐにまた別の話題を持ち出し、今日の出来事を楽しげに話し始めた。

僕もそれに相槌を打つ。

一見すれば何も変わらない。

だけど胸の奥では、昨日感じた空虚さがまだ抜けきらずに残っていた。


──あの「ひとりの坂道」を、僕は忘れられない。


それから数日後、また彼女がいなかった。

そのときもきっと、友達との予定があったのだろう。

別に責める理由なんてない。

でも、僕は気づいてしまった。


「一緒に帰る」ことが、もう絶対ではないのだということに。


少しずつ、ほんの少しずつ。

僕たちの放課後は欠けていく。

それは大きな音を立てて崩れるものではなく、砂時計の砂が落ちるように静かで、気づけば形が変わってしまうものだった。


帰り道、彼女が隣にいるときでさえ、その欠けた穴を思い出す。

だから余計に、彼女の声を強く胸に刻みつけようとした。

彼女が笑うときの声。

足音のリズム。

横顔にかかる夕陽の光。


どれも「当たり前」じゃない。

ひとつでも欠ければ、すぐに壊れてしまうのだと知ったから。


「じゃあ、また明日」

「うん、また」


交差点でそう言葉を交わす。

でもその「また」が、本当に約束されたものではないことを、僕はもうわかってしまっていた。

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