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輝く君へ  作者: P4rn0s


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11/15

日々を彩らず、ただ自然に

僕と彼女の放課後は、再び日常になった。

昇降口の柱の影に立つ彼女。

坂道を並んで歩く二人の影。

交差点で別れ、明日を約束するその一瞬。


それらはすべて、夏休み前と同じように繰り返されていた。

──いや、むしろ以前よりも自然になっていた。


待ち合わせの合図もいらなくなった。

僕は下駄箱で靴を履き替え、ふと顔を上げると、必ずそこに彼女がいる。

言葉もなく目を合わせ、わずかに笑みを浮かべて歩き出す。

その流れが当たり前になっていた。


けれども、「当たり前」には必ず影が潜んでいる。

日常は甘美であると同時に、少しずつ色を失わせていく。


坂道を歩きながら、彼女は今日も色々なことを話していた。

「この前さ、駅前の古本屋で偶然面白い本見つけて」

「隣のクラスの先生、めちゃくちゃ早口でさ」

「コンビニの新作アイス、絶対食べてみて」


その声は相変わらず柔らかくて、聞いているだけで心が落ち着いた。

だけど、僕はふと気づいた。

返す言葉が、少なくなっている。


以前なら一つひとつに感想を返していた。

「へえ、面白そうだね」とか、「わかる、それ昨日見た」とか。

でも今はただ、「うん」とか、「そうなんだ」とか。

短い言葉しか出てこなくなっていた。


彼女もそれに気づいているのかいないのか、変わらず笑顔で話し続ける。

けれどほんの一瞬、僕に目を向けるとき、どこか探るような表情を浮かべるのを僕は見逃さなかった。


──本当はもっと話したい。

──もっと彼女のことを聞きたい。


そう思うのに、口を開くことができなかった。

胸の奥にある言葉はすべて、「好き」という一言に行き着いてしまう気がして。

それを言ってしまえば、この関係が壊れるような恐怖が常に付きまとっていた。


だから僕は黙る。

だから彼女が話す。

その均衡の上で僕らの関係は成り立っていた。


夕陽が差す交差点に着く。

車の音、信号の電子音、人々の足音。

彼女はいつものように笑って言った。

「じゃあ、また明日」

「……うん、また」


そのやり取りに、もう胸が熱くなることはなかった。

代わりに、どこか安心と、そして少しの退屈が同時に生まれていた。


──僕らはいつの間にか、互いを「日常の一部」にしてしまっていた。


家に帰ると、机にノートを広げながらぼんやり考える。

彼女と過ごす時間は確かに大切だ。

でも、もしそれが永遠に続いたらどうなるんだろう。


好きだと言わない限り、何も変わらない。

言ってしまえば、壊れるかもしれない。


僕はその狭間に立ち尽くしていた。


夜、眠りに落ちる直前。

頭の中に浮かんだのは、彼女の声だった。

「ねえ、なんでそんなに黙ってるの?」

あのときの問いが、今もずっと耳の奥に残っている。


僕はその問いに、いまだに答えられないままだった。

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