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現実《リアルワールド》オンライン  作者: 消砂 深風陽
【ミカミ編】四章 成長編
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集計結果

 これからどうするか、という話になった。

 それはまぁそうだろう。一応ルナを買い取るという目的は達成したので、この町にいる必要はない。その上リーシャと俺は、……まぁ内緒にしてもらうという約束ではあるのだが、アレイに居場所がバレるかもしれないという可能性を僅かなりとも作ってしまったので、動くか動かないかの選択を迫られる。


「……なるほど、事情はわかりました」

「スマンな、俺たちの事情に巻き込んで」


 ローリーはリーシャから事情を聞き、すぐに察してくれた。だから付いて来いと強要するわけにもいかない。ルナは「そんなご事情が」と少し寂しそうな目をしている。町を離れるのが嫌なのかもしれないが、まぁ付いて来てくれるだろうし、行った先でも卒なくこなすだろう。

 そうなると、動く方がいいようにも思えるのだが、ローリーが来るか来ないのか、パン屋でもらえるはずだった金はどうすればいいのかなど問題はいくらか積まれている。

 だがリーシャはすでに動く気マンマンのようなので、俺もリーシャの意向に合わせる予定だ。ルナもそこに自動的に組み込まれることになる。まぁ強要はしないが。


「一晩考えてもいいですか?」


 ローリーは呟くように言った。

 まぁ、ローリーに限って言うのであれば、無理に動くことはないだろう。ダンジョンの仲間はギルドで募集してもいいらしいし、この町では臨時的にパーティに参加することもできるらしい。俺がローリーの立場だったら多分自分の実力を鍛えるためにこの町に残ることを選択する――あぁいや、でも仲間が動くなら動くという選択ももちろん考慮はするだろうが、最終的には町に残るという選択もある以上、優柔不断が顔を覗かせそうな気もするな。


 とりあえず一週間ほど答えを後回しにし、ダンジョンに潜るのは中止となった。まぁ金には余裕があるし大丈夫だろう。



 そんなわけで、ルナとふたりでパン屋へ。ローリーとリーシャは居残りだ。店先で列が出来ているので何事かと思ったが、俺たちを見た店主が手を振りつつ「ちょっと奥で待ってておくれ」と言うので、遠慮なく上がらせてもらうことにした。

 パンはご主人も焼いているらしく、「待っている間これでもどうぞ」と何種類かのパンをくれた。ルナが気に入ったのは、甘いパンだがシンプルな形のパンだ。ちょっと固い。何という種類のパンなのかと聞いたら、スコーンだと答えてくれた。スコーンか。前の世界で聞いた覚えがあるな。食べたことはないが。

 俺は普通の食パンを食べながら、そういえばこの店、惣菜パン的なものがほとんどないなと気付く。


「サンドウィッチにでもすればいいのに」

「サンドウィッチ?何だいそれは」

 ちょっと呟いてみると、ご主人は大いに食い付いた。



「おや」

「あぁ、お前、これちょっと食べてみろ」

 しばらくして店が暇になったのか、店主が戻って来た。目敏く俺の作ったサンドウィッチを見付けたので、ご主人がひょいと皿から一枚を手渡した。

「……ふむ。これは黄油(バター)かい?」

「質問は後で聞こう。とりあえず口の中がなくなってから話すんだ」

 ルナや子供が見ている前で食いながらしゃべるのはどうなのか、と思ったが、よく考えてみればこの世界で行儀やマナーについてうるさく言われたことはないな。

 まぁとりあえず店主が口の中のものを紅茶で飲み下したので質問に応じることにする。

黄油(バター)は、パンに水分が沁み込んでしまわないようにするためだ」

「あぁ、確かに何か挟むと沁み込んでヒドいことになるからねぇ。なるほどこうすれば……ふむふむ」

 店主が言うと、ルナがくいくいと裾を引っ張る。

 ちょっと呆れた顔をしているので、あんまり新しいことを教えるなということなのだろうが、別にこのくらい教えたところでなぁ、と苦笑で返したら、案の定溜息を吐かれた。


「とりあえず今日のところはボチボチって感じかねぇ」


 フレンチトーストの売り上げについて聞いてみると、物珍しさから買って行った客がかなり多く、店はそれなりに繁盛したようだ。

 店にはテーブル席もあるらしく――表から見えないところにあるらしい。俺も知らなかった――そっちで食べる人限定で売っているらしい。まぁ惣菜パンだしな、下手に持ち帰られて食中毒でも出られたら困るか。

 ルナが売り上げについて聞くと、昼の集計までだけでも75食ほどが売れたらしい。

「元が売れなくなったパンだからね、それだけでも大儲けさ」

「……品質にだけは気を使ってくれ」

「大丈夫さ、念のためカビ菌チェックはしてるしね」

 何だカビ菌チェックって、と常識検索。

 この世界では、飲食業者はカビ菌をチェックするための魔法を習得しているのが必須条件になるようだ。ちなみにカビだけではなく、食中毒の原因となるモノは全てその魔法に引っかかるらしく、衛生的にはその魔法ひとつで十分のようだ。

 ただし魔法の習得と習熟には困難を極めるため、認可を得るのは難しいようだ。

 どれくらい難しいのかと言うと、まず前提となる魔法が27種。魔法の素質レベルが最低でも3と言われているらしい。

 俺の素質レベルは安易に上げた20なのでありがたみがわかないのは仕方ないことだろうと思うが、常識検索してみると、素質レベル3というのは、俗に天才と言われるレベルなのだそうだ。

 高い素質レベルの有名人として広く知られている人物で言えば、現状最高レベルが【レベル不明】、ルーメル=ホワイトクラウド。どこかで聞いたような気がする名前だが、どこで聞いたのかは忘れた。不明って何だ。20じゃなくて不明なのか。不明なのに最高レベルってのはどういうことなのかわからんが。

 次点は故人、【レベル15】で青の聖女(ブルーセイント)。確か世羅とクーの会話の中に出てきた有名人だ。名前は何だっけか。絵本もあって、読もうと思ったが文字が読めず断念したやつだ。

 そして次も故人で同じく【レベル15】、改変せし者(レボリューター)。ミスト=ホワイトクラウドだったか、と思い出してから、あぁそう言えば、と現状最高レベルの名前のうろ覚えな記憶を思い出した。同じ苗字だからきっとこれと間違えたのだろう。

 それを考えると、俺の20で、魔法ギルドの登録員が驚いた理由ってのがよくわかる。伝説にまでなってる2人を越えてるしな。


「それで、今日はどのくらい売れたのですか?」

「集計してみないとわからないけど、結構売れたよ」


 ルナが尋ねてようやく、何のためにここに来たのかを思い出した。

 そういえばそうだ。そんなわけで集計するまでの時間を待つことになった。



 集計結果は思ったよりも早く出た。

 今日はお試しだったこともあり、持ち帰りなしだったこともあってか120食。午後はそんなに売れていなかったと思っていたのか、店主も少し意外そうな顔を見せた。

「そういえばチマチマと売れてたね。もしかしてスコーンより売れたかもしれないね……」

 そんなことを言いながら、全部の集計を続ける店主の手元を見ていると、慣れたようにルーン文字の数字を書いて行くので、ひとつひとつ読んでいると、何となくだが数字への理解が進む気がした。

 結果としてはスコーンの方が少しだけ多く売れていた。

 ひとつだけ食べさせてもらったが、かなり美味い。これに匹敵するほど売れたというのなら、今後も期待できるかもしれないな。


 もしかしたら、ローリーと別れて俺たちはこの町から離れるかもしれないということを店主に話した。

 店主は「おや」と寂しそうな顔をしてくれたものの、「まぁそうなったらギルド経由で金は振り込むよ」と苦笑する。

 ルナがその顔を見て、店主に寂しそうな顔を向けていたのが印象的だった。

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