第6話「黒い直方体とシャカシャカの儀ですわ~!」
本日も頑張りましたわ~!
お疲れ様でございましてよパッツンさま~! 六限目のわたくしのご活躍、見ていただけましたか~! そうなんですの、わたくし数字の取り扱いは苦手じゃなくってよ~! 点Pさまがどこに動こうと捉えてみせますわ~! どこの世界でも数字はだいたい同じですの~!
「んふ~! お脳みそ使ったら小腹空きましたわ~! ……え、マジですの!? でもお先輩方がいらっしゃるのでは……ならぜひ!」
ラッキーですわ~! なんとサドウブでティータイムのお誘いを頂きましたわ~! サドウブは何故か無料でおやつがいただける素敵な部活だと聞いておりますわ~! もっともわたくし、お先輩方との接し方がわからないので今後もフリーウィメン(格好いいので複数形にしてますわ)を貫きますけれども~!
「そうですわね! わたくしがお誘いしてみますわ! ……オメグミさま! 本日サドウブで一発茶ぁーしばくのですがご一緒に……。あらそうですの……ごきげんようですわ……」
おバイトなんて偉いですわ~! 残念ですがお二人で楽しませていただきましょ~!
「でもパッツンさま、わたくしお茶の道をあまり存じ上げないのですが……それなら安心ですわ!」
適当で良いなら安心ですわ~! しかしながら腐ってもわたくしお嬢様。ニッポンの伝統茶ぁーしばきなんて身につけてなんぼですわ~! ここはしっかりサドウブさまのお姿をまなこに焼き付けお嬢様格上げチャレンジですわ~!
「す、すごいですわ~。和ですの和~! 最初のくっそ小さい入口からもう本格的なのが伝わって来ますわ~」
サドウブシツは何やらとても厳かで本格的でしたの~! もっともわたくしは本格が何かもわからないので、これはガッツリ知ったかぶりですわ~! お許しあそばせ~! 少しばかり大人になってみたかったんですの~!
「ぱ、パッツンさま……素敵なお召し物でございますわ……! あ、お正座。お正座ですわよね知っておりますわ~!」
お制服からお和服に変わるだけですっごい雰囲気ですわ~! わたくしのためにそんなおめかしていただけるなんて、ドキドキしてきますわ~! パッツンさまが居なくなったのできょろきょろしてみたら、なんだか不思議なものがいっぱいありますわ~! 絵じゃなくて文字を飾るなんてニッポンという感じですの~! 和風ですの和風。テンション上がってきますわ~! わふー!
「え、そうですわね……! すごいですわ! こう、字! 字が! 迫力ありますの字が! 読めませんのすごい字! ……ええ、それとお花も! お花もキレイですわ~! 香りを嗅いでよいですの?」
なんかちょっとパッツンさまの「戸惑い」を感じましたのでわたくし動かずにすんすんしましたわ~! なんだかとんちんかんなことを聞いてしまった自負はありますの~! ごめんあそばせ~!
「あ、お菓子ですの。お菓子食べていいんですのお菓子。お菓子いただきますのお菓子。お菓子」
なんか緊張しすぎて言動が落ち着きません~! これじゃあおかしじゃなくておかしいですわ~!(わたくしの挙動ですの)。でもお菓子嬉しいですわ~! お作法はわかりませんがいただきましょう~! わたくしこんな感じでございますが、しっかりお控えするところお控えするのが美徳と存じておりますの~! 一口でぱくー! なんてやらないほうが良いことは知っておりますわ~! 伊達にお嬢様やってねえですわ~!
「ですがなんですのこの直方体……黒い直方体はもはやお菓子というよりも物質とか素材のそれですの……」
不思議なお菓子ですわ~! 初めての食べ物、くんくんしたくなるのは山々ですが流石にそれは無作法というものですわ~! くんくんせずにお口にするのは怖いですが……ええいおかあさまよ、パッツンさまが出したものが危ないもののわけがないですわ~! ぱくりんちょですわ。
「こ、これはくっそ……! ……とても美味しいでございましてよ結構なお味であそばせ~……」
興奮して大声を出しそうになったのを無事抑えましたわ~! 少々の汚いお言葉は、パッツンさまの耳に届かなかったと信じたいですわ~! この物質、真っ黒なナリをされておりますが、くっそあまあまですの~! 色とのギャップが凄まじい甘味ですわ~! 和のチョコレートみたいですの~!
「食感も素敵ですの……! ちびっちゃいし、じっくり味わうの礼儀かもしれないですわね……。ってなんですのしゃかしゃか急にしゃかしゃか!」
しゃかしゃかですわ~! なんだかパッツンさまが手元でしゃかしゃかを始めましたわ~! そういえばサドウといえばこれな感じがしますわ~! お茶ってしゃかしゃかなんですの~!? そんなにしゃかしゃかやられたら悟ってしまいますわ~! ……でも、なんだか素敵な所作ですの。パッツンさまは真剣な顔でなさってますし、なんだかわからないけれど、それを見ていたらわたくしの今までの所作。色々な常識や決まり事を無視している気がしてならないですわ……!
「お菓子、美味しいですの……お菓子……」
知らないのと、知ってて出来ないのは別ですわ~! お菓子をいただけるのはもちろん素敵ですけど、言葉で言い表せないこの感じ。少しでも理解……というよりも、感覚を得たいですわ~!
「……パッツンさま、その。少しだけでもよろしいの。わたくしにサドウの教えを……」
そんなことを言ってましたらお茶が出来上がっておりましたわ~! 普段飲んでいるお茶とは特別な感じがしますし……入ってる容器も見たことありませんの。というか今更ですが、ここのお部屋はほとんどが見たことないものばかりですわ~! すごい字に素敵な容器のお花。お菓子にお菓子を乗せている器、お菓子を食べるフォークでさえ普段見かけないものばかりですわ~!
「……そ、そうですね、冷めないうちに。ちょ、ちょうだいいたしますわ……」
なんだか思ったよりも複雑なお味ですわ~! 見た目から少々苦いものだと思っていましたけど、先程のお菓子の風味が残ってますので、そこまで嫌な感じはないですの! それにこのあわあわがとてもふわふわで濃厚で……美味しいですわ!
「おずずずごっくん。あらやだわたくしったら失礼致しました」
飲んでいるうちに夢中になってしまって、思わず音が出てしまいましたわ~! はしたないったらありゃしないですわごめんあそばせ~!
「残ってるお菓子も食べちゃいます。これ濃厚で、でもくどすぎなくて大好きですの」
お茶とお菓子。ここまでニッポンに寄せたものを食べたのは初めてですわ~! おいもさんチップスとおコーラの相性とはまた違ったカップルさんで、わたくしの知らない世界が垣間見えましたわ~!
「パッツンさま。こちらのお茶とお菓子、大変美味しく頂きました。これ、どういうものなんです? 教えて下さいまし~!」
特別なものだとはわかっているけど、気になって夜と授業中しか寝れなくなってしまいますわ~! もしわたくしもおうちでしゃかしゃかしたり、この黒物体を堪能出来るものならしたいですわ~!
「……ほほう、これはヨウカンと言うんですの。きっとお高いんでしょうけど、今度おコンビニに行ったらお値段確認しますわ~! もしかしてこのお茶碗も専用のものですの?」
こういう細かい所にこだわるのが非常にお嬢様らしいですわ~! なんだかサドウ、好きになってしまったかも知れないですの~! ……ってなんだかパッツンさまのお顔が。あらやだ、わたくし何か失礼なことを……。
「え、いえ全然……ご存知の通り、サドウに関してはわたくし何もわからず……。なんなら今から教えを頂きたいくらいですわ~!」
やはりこういうのは形からだけでも知っておくべきじゃ……わたくしのお嬢様レーダーがそう感知しましてよ! ……でもパッツンさま、最初はわたくしのことを見て、ほんのり戸惑っていたご様子でしたのに――今はなんだか、落ち着いていらっしゃるというか…… わたくし、なにかお下品なことをしていたという自覚しかないのに変ですわ~!
「ええと……わたくし、なにか粗相でも……」
そう聞いたらパッツンさまは突然笑いだしちゃいましたわ~! え、なんですの? わたくしまた何かやっちゃいました? わたくしはただお菓子を食べてお茶を頂いただけなんですが……それってわたくしのサドウの心がダメすぎってことですわね?
「……そ、そうなんですの!? わ、わかりました~! それがサドウと言うならば! わたくしこのままの自然体お嬢様でやらせていただきますわ~!」
なんだか太鼓判を押されてしまいましたわ~! ドンドンカッ!ドンドンカッ!ですわ~! よくわかりませんが、わたくし大変楽しめましたわ。日常とは少し違う体験、とても素敵なものでしたわ~!
これはまたお礼をしなくちゃですわね。もしパッツンさまがわが城へお招きした際にはわたくしもしっかりおもてなし致しますわ~! おいもさんはおキレイなお皿で、謎のフォークもつけて、おコーラもしゃかしゃかして。これで立派なサドウブお嬢様の爆誕ですわ~!
それじゃあまずその第一歩として……あのしゃかしゃかのやつを買って帰りましょ~! 百円ショップにゴーですわゴーゴー!




