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28.まずは工房作り(3)

「ふぅ……骨組みは完成しましたね」


 私たちの目の前には土台と柱を組み合わせた、工房の骨格が出来上がっていた。


「そ、そんな……嘘だろ。こんなに早く、骨格が出来上がるなんて……」


 出来上がった物を見て、シオンさんは信じられないとでも言いたいように目を擦っていた。


「まぁ、生活魔法のお陰ですね。どんな重たい物もスイスイと運べて、自由に組み合わせることが出来ましたから」

「いや、だから……。その生活魔法が規格外なんだよ」

「そうなんですか? この程度は生活にしか役立てられないので、大した魔法じゃありませんよ」

「ここじゃあ、大層な魔法なんだよ!」


 シオンさんは凄い魔法って言ってくれるけれど、私にとっては生活を豊かにしてくれる魔法の一種でしかない。だから、凄いと言われてもピンと来ない。


「私の生活魔法よりも転移魔法とか、並列思考とかの方の魔法が凄いですよ」

「ヒナの生活魔法も規格外だと思うが……」


 シオンさんのいうことがよく分からない。ただの生活を豊かにするだけの魔法なのになぁ……。


「その話は置いておくことにしましょう。さぁ、次の作業ですよ。楽しい、楽しい壁づくりです!」


 私は大きなバケツの前に行くと、モルタルの材料を入れてかき混ぜる。モルタルが出来上がると、バケツを宙に浮かせて工房の前に移動をした。


「壁づくりは柱を作るよりも地味じゃないか? そんなに楽しいのか?」

「はい。石と石が綺麗にはまっていく瞬間が堪らないんですよ。その隙間を埋めるモルタルを塗る作業も楽しくて……。我慢できません! 早速、作業開始です!」


 まず、壁の材料となる石を次々に浮かせて移動させる。まず一番下にモルタルを塗ると、その上に石を置く。そして石の横にモルタルをつけると、今度は隣に置く。


 その作業を繰り返していくと、柱と柱の間に一列の石が隙間なく並べられた。


「ほう……綺麗な列になったな。これはこれで気持ちがいい」

「高さはどれも同じにしたんですが、横幅は変えてあります。これで、不揃い感を出して、自然みの溢れる壁にしたいんですよね」

「不揃い感を出せば、自然な感じになるな。だが、石を合わせるのは難しくないか?」

「そこが楽しいんですよ。一つずつ吟味して、合う石を探してはめる。そして、はまった瞬間の快感! 堪らない瞬間ですよね!」


 この列が段々と積みあがっていくことを考えると、堪らない達成感が生まれる。それを想像するだけで、とても嬉しい気持ちになる。


「シオンさん、見てて下さい。今から壁を作って作って作りまくります!」

「お、おぅ……。凄い気合だな」

「石を置いて、モルタルを塗って。石を置いて、モルタルを塗って。ふふふ、ふふふふふふ、楽しい!」

「お、おい……ヒナ?」

「石、モルタル。石、モルタル。石、モルタル。石、モルタル。はい、一列完成!」

「いくら何でも早すぎないか!? もう一列出来たのか!?」


 作業を続けていけば続けていくほど、作業のスピードが上がっていく。これは私の気持ちが高ぶっているからで、身体能力が上がっている訳ではない。


 どんどんやれば、楽しい。どんどんやれば、達成感。この中毒性のある作業、本当に堪らない!


「完璧な角度からのモルタル塗り。そして、完璧な位置に石を置く。あぁ、この感じ……とってもいい!」

「だ、大丈夫か? なんか、おかしくなってないか?」

「石、モルタル。石、モルタル。石、モルタル。石、モルタル。はい、もう一列完成!」

「だから! 作業が早すぎる! もっと丁寧……いや、丁寧だったわ!」


 ふふふ、積みあがっていく石。しかも、大きさの違う石がはまり合う感じ。最後に綺麗にはまったこの光景。やっぱり、堪らない!


「はぁはぁ! どんどん積んでいきますよ!」

「お、落ち着け! やっぱり、ヒナはおかしくなっている!」


 ◇


 その数時間後。無我夢中で石を積み上げていくと――。


「ふぅ……壁が出来ましたね」


 私の目の前には柱だけだったら工房の骨組みに、立派な石の壁が出来ていた。不揃いの石がきっちりと積み上げられ、味のある壁が出来たと思う。


「ふふふ、満足です! どうですか、シオンさん。立派なものでしょう?」


 満足げに笑うと、シオンさんに同意を求めた。すると――。


「立派も何も、数時間で壁が出来るとは何事だー!」


 困惑したように叫び声を上げた。


「とんでもない速さと、とんでもない正確さでどんどん石を積み上げていって、気でもおかしくなったかと心配したぐらいだ。なんだ、あの異常なまでに早い手さばきと正確さは! 普通の職人じゃ無理だ!」

「ついつい、夢中になってしまったんですよ。壁づくり、楽しかったです!」

「あの作業量を短時間で終わらせるのが楽しい、か……。ヒナは規格外すぎる!」


 シオンさんが猫の手で頭を抱えて、もだえるように体を揺らしている。なんで、そんなに困惑しているのか分からないけれど、私は楽しかったからよし!


「じゃあ、最後の仕上げをやってしまいましょう」

「えっ……まだやるのか?」

「最後はすぐに終わりますよ。瓦を並べて、窓を取り付けるだけです」


 そういうと、私は瓦を生活魔法で浮かせると、屋根の板に次々と並べていった。


「あ、あんなに多い瓦が……一瞬で屋根に!」

「手でやるのがいいんですけれど、今は時間が惜しいですからね、パパッと終わらせます」


 シオンさんが驚いているうちに、瓦がゴトゴトと次々に重なって屋根になっていく。動かして数分、木の板が張っているだけの場所に立派な瓦屋根が出来上がった。


「はい、これで屋根の完成です」

「し、信じられん……。屋根が一瞬で……」

「最後に窓ですね。木枠とガラスを組み合わせるだけです」


 アイテムボックスで加工をした木枠とガラスを生活魔法で浮かせ、がっちりとはめて窓を作る。作った窓は壁に作った穴にしっかりとはめ込む。


 先ほどまで何もなかった土地に立派な工房が出来上がった。


「じゃーん! これで工房が完成です」

「な、な、な……一日で工房が完成したぞ!?」

「はい、ちょっと頑張りました」

「ちょっとの頑張りで、一日で工房が建てられて堪るかー!」

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