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14.アウリィ商会(2)

「二人とも落ち着け」


 シオンさんがテーブルに乗った時、頭に違和感を覚えた。すると、混乱していた頭がスゥッと楽になる。


「あっ……」

「こ、これは精神系の……」


 シオンさんがまた魔法を使って、場を落ち着かせてくれた。


「リネア、驚くのは分かるが、この子は人付き合いが苦手だから優しくしてほしい」

「ごめんなさい……。嫌な気分にさせたわ」

「ヒナは……そのままでいい」

「私には成長が見込めないってことですか!?」


 うぅ、わ、私だってやれば出来る子だもん。


「まぁ、話をまとめると、この装飾品は売れるという事で間違いないか?」

「え、えぇ。見た目も良いし、商品だけの価値だけで見ても売れるわ。まさか、能力が付与しているとは思わなかったけど……」

「それについては、私も驚いている。こんな事が出来るんだよ、ヒナには」

「ヒナさん、あなたには凄い才能があるわ。職人の技術だけじゃなく、付与の技術は他の追随を許さないくらい優れたものよ」

「そ、そうですか?」


 技術を褒めらるのは素直に嬉しい。だけど、付与術をこんなに褒められたのは初めてだ。クラフトワールド・オンラインでは普通だったのに……。


「良かったな、ヒナ。この装飾品は売れるみたいだ」

「は、はい……。ホッとしています」


 この世界でも私の作った物が売れる。それを知ると、じんわりと嬉しさがこみ上げてくる。


 人付き合いは苦手だけど、この瞬間は好き。何度も味わいたい気持ちだ。


「じゃあ、今度は交渉だな。この商品をいくらで買い取ってくれる?」

「そうねぇ。キラーラビットの素材自体は安いわ。牙で300フォル、毛皮で500フォルよ。その他の材料費が200フォルとして、それぞれの技術料を2000フォルにしましょう」

「ぎ、技術料で2000フォル……」


 素材よりも技術料が高いなんて、高く買いすぎなんじゃ……。


「それに加え、能力付与がされている。この能力は人気のある能力だから、一つ5万フォルね」

「シ、シオンさんっ。そ、それってどれくらいの料金なんでしょうか?」

「そうだなぁ……。この王都で独り暮らしをする際はひと月10万フォルくらいするな」

「ひ、ひと月の半分!?」


 能力付与で独り暮らしの費用の半分も取るの!?


「そ、それは……凄く、高いんじゃ……ないですか?」

「ようやく、付与した能力の凄さが分かった? でも、これはあくまであなたに支払う金額。店頭価格はまだ上がるわよ」

「あわわわわっ! そ、そんなので……う、売れますか?」

「それが、私達の仕事だもの。私達は職人さんから正当な金額で買い取って、売れると思った値段で売るだけよ」


 言っている事は分かるけれど、高いから不安になる。正当に評価をしてくれることは嬉しいけれど、本当に売れるかな?


「不安そうね」

「す、すみません! 嫌な……気持ちに、させてしまって……」

「いや、いいのよ。だって、私達は出会ったばかりじゃない。まだ、信用してもらえるなんて思ってもないわ。だけど、ここは私を信用して。あなたの商品は必ず売ってみせるわ」


 自信満々にそう言われると、私の不安も消えていくようだ。この人なら任せられそう。少しずつだけど、そう思えるようになってきた。


「じゃあ、あの……作った商品の事、よろしくお願いします」


 まだ目を合わせられないが、精一杯のお願いをお辞儀に籠めた。すると、リネアさんが嬉しそうに笑ってくれた。


「あ、そうだ」


 その時、シオンさんが思い出したように声を出した。


「同じ装飾品が他にもあるんだよな」

「あっ、はい。そうでした」

「あら、一つずつじゃなかったのね。それは助かるわ。売れる商品なら幾つでも欲しい物」

「じゃあ、出してやれ」

「はい」


 同じものをまだ作っておいたのだ。私はアイテムボックスから装飾品をテーブルの上に置いた。


「はっ?」

「ひぃっ!」


 すると、またリネアさんが真顔で低い声を出した。な、なんなのっ!?


「こ、これは同じ商品? それが、こんなに……?」


 テーブルの上には山盛りになった装飾品が出ていた。


「す、すみません! すみません! つい、夢中になって作りすぎてしまって!」

「ちなみに一日でやり切った」

「い、一日ーッ!?」

「あの、数はありますが……ちゃ、ちゃんと……その……付与も出来てます!」

「全部に付与ーッ!?」


 シオンさんと私が説明すると、リネアさんがまた絶叫した。


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってて! い、今出てきた物もちゃんと検品するから!」


 リネアさんは頭を押さえて、一つずつ装飾品を手に取る。


「……凄い、ちゃんとしている。付与もついている。こっちは? ……えっ、こっちもちゃんと。こっちは!? あっちは!? どっちは!?」


 凄い剣幕でリネアさんが装飾品の検品を進めた。進むごとに声が大きくなって、しまいには――。


「全部完璧だったぁぁぁっ! これ以上にないってくらい綺麗に仕上げているし、ちゃんと付与も出来ているぅぅぅっ!」

「えっ、あっ、す、すいませんっ! こ、こんなの作って……ごめんなさいっ!」

「怒ってない、怒ってないから! 語彙力がないだけだからぁぁぁっ! うわーん、凄すぎるぅぅぅっ!」

「こらこら、落ち着け」


 何度も頭を下げる私と、頭を抱えて絶叫するリネアさん。すると、シオンさんがまた精神系の魔法を発動した。


「うぅ……すいません……」

「あっ……またご迷惑を……」

「全く、落ち着いて話をしてくれ」


 呆れたようにシオンさんがため息を吐いた。私達は落ち着くと、リネアさんから話を切り出した。


「全て問題ないわ。だから、全て私の方で買い取る」

「い、いいんですか? あの、凄い金額に……なるんじゃ……」

「こんな凄い商品を買わない商人はいないわ! 大丈夫、これは利益の出る商品だから安心して!」


 無理はしてないよね? チラッとリネアさんの顔色を窺うと、晴れ晴れとした表情をしていた。それを見て、安心出来た。


 私は改め頭を下げた。


「装飾品、の事……よろしく、お願いします」

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