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13.アウリィ商会(1)

「うぅ……新しい人、辛いぃ……」

「これが最後だから頑張れ」


 これからまた、新しい人に出会わなければいけない。それが重荷で重荷で仕方がない。重たい体を引きづって通りを歩いていく。


「ここだな、アウリィ商会のお店は」

「こ、ここが……」


 シオンさんが立ち止まり、私はお店を見上げた。


  石造りの壁はしっかりとしていて、それでいてどこか温もりがある。入り口には丸みを帯びた木の扉があり、淡い光に照らされてやさしく輝いていた。窓には花の鉢が並び、柔らかな雰囲気が漂っている。


「……思ったより、入りやすそうな場所ですね」

「だろ? だから大丈夫だ」

「でも、人は……」

「こんなお店に厳つい人なんていないから大丈夫だ。ほら、入るぞ」


 シオンさんは魔法で扉を開けると、私は恐る恐る中に入っていく。中に入ると、沢山の棚に色とりどりの物が置いてあるのが目に見えた。雰囲気も柔らかくて、とても居心地が良い。


「いらっしゃいませ」


 すると、お店の奥から声が聞こえてきた。私達はその奥へと行くと、カウンターの奥に椅子に座った十五歳くらいの女の子がいた。


 その女の子は私達に笑いかけてくる。


「何か探し物?」

「いや、別の用事だ」

「わっ、猫が喋った! 別の用事なら、私に出来ることはある?」

「商品を売りに来た。店主に合わせて欲しい。ヒナ」

「あの、紹介状……です」


 シオンさんが話を進めると、私はおずおずと手紙を差し出した。


「へー、商業ギルドからの紹介状か。分かった、今呼んでくるからちょっと待ってて」


 女の子はそう言うと、お店の奥にある扉の中に消えていった。しばらく待っていると、奥の扉が開く。


「商会長が会いたいって。こっちに来て」


 そう言われると、私達は女の子を追ってお店の奥へと入っていった。廊下を抜けた先の扉の中に入ると、そこは応接間だった。


 すると、ソファーに座っていた女性が立ち上がる。


「ようこそ、アウリィ商会へ。私が商会長のリネアよ」

「私はヒナの保護者のシオンだ」

「わ、わた、私……はっ……ヒナって、い、言いましゅっ」


 あっ、かんじゃった! ひぃっ、ど、どうしよう!


「可愛らしい来訪者で良かったわ。さぁ、座って」


 ……そ、そんなに気にしてない? よ、良かった……。


 私は言われた通りにソファーに座ると、隣にシオンさんが座ってくれた。すると、シオンさんが話を切り出してくれる。


「時間を取ってくれて感謝する。商品を見て貰いたいが、いいか?」

「ぜひ、お願いします。紹介状にはかなり腕の立つ職人さんだと窺っているので、どんな商品を見せてくれるのか楽しみにしてますよ」

「じゃあ、ヒナ。商品を出すんだ」

「えっと、はい……。これなんですけれど……」


 早速商品をアイテムボックスから出すと、ソファーの間にあるテーブルの上に並べた。


「へぇ、これは……」


 するとリネアさんが目を輝かせて商品を手に取る。


「キラーラビットの牙を首飾りにね、カッコいいわね。……あら、牙に模様が。……へぇ、良いアクセントだわ」


 牙飾りを真剣な目で品定めして、リネアさんは嬉しそうに微笑んでくれた。


「こっちはウサギの尻尾? ……この感触、堪らないわね。見た目もいいし、触り心地も抜群」


 次にウサギの尻尾のアクセサリーを手に取り、可愛らしい笑顔を浮かべて確かめてくれた。


「これは良く出来た装飾品ね。ぜひ、ウチで売らせてもらえるかしら?」

「ほ、ほ、本当、ですかっ?」

「えぇ。どれもちゃんとしているし、売れるわ」


 よ、良かった……。私の商品が認められた。ホッと一安心していると、シオンさんが話を続ける。


「でだ、その装飾品には実は能力が付与されている」

「えっ」

「ひぃっ!」


 能力付与の事をいうと、リネアさんが真顔で低い声を出した。この光景、前に見たー!


「ちょ、ちょっと待って……。こんな低級の中の低級の素材に能力が付与されるなんて……。まさか、そんなことが……あははっ!」

「いや、本当なんだ」

「……鑑定するわ」


 信じられないといった様子で戸惑っていたリネアさん。だけど、シオンさんのただならぬ雰囲気に押されて、覚悟を決めた顔をした。


 じっと、装飾品を見ていると――。


「ひぃぃぃっ、ほ、本当についてるぅぅぅっ!」


 怖い物を見たような顔をして絶叫した。


「しかも、『疲労回復』に『幸運』っていう、物凄い能力が付与されているぅぅっ!」


 挙動不審になったリネアさんは、まるで触ってたらダメな様子で装飾品をテーブルに戻した。


「あ、ありえない……ありえないわ! キラーラビットごときの素材に高性能な能力が付与出来るなんて! 普通だったら、ありえないわよ! こ、これもあなたがやったの!?」

「ひぃっ、ご、ご、ごめんなさいっ! わ、わ、わたしですぅっ!」

「ど、どういうこと!? 良い技術を持つ職人かと思えば、付与術士の才能もあるって事!? こ、こんなことがあるわけ!」


 どうしてみんな、そんな風に驚くのー! これが、私の普通だったのにー! 私が悪いのー!?

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