表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
柳の下の夕麗さん ~ह ホラー配信者の僕が学校の幽霊美少女をネタにしたら、キスで生気を吸い取られて奴隷になった件 ह~   作者: 長尾 燕季


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/10

第1話 危険なリクエスト

「はい、ということでね。始まりました【突撃! 隣の都市伝説】~ッ!」


 と、元気よくカメラに向かってご挨拶。画面に映る僕の狐面。

 スマホの時刻は深夜零時過ぎ。配信アプリは正常に稼働中。

 コメント欄のファンのたちも嬉しそうな反応だ。


 :キタワァ!

 :やってる~?

 :キャー楽しみ☆


「ついに第四十九回ということで、今日も心霊スポットに突撃していくぞー!?」


 :四十九ってやば

 :忌み数字じゃね?

 :終わりってことだよ


「あーやっぱそこ気になる? でも大丈夫。第十三回のときも乗り切ったから!」

 

 登録者数十○万人。始まりはプラモデル制作の内容だったが、ある日の雑談で話した怪談が妙にウケて、あれよあれよとホラー路線に切り替わった僕の配信。


 そこら辺のホラー配信者と違うのは一点だけ。

 取り上げる怪談が、全部 "本物" だということ。


 幽霊も妖怪も、この世界にはちゃんと存在する。そしてそれらが "視える" 僕は――本物の霊能力者だ。とはいえ、実力は下の下。視えるだけで戦えない。


 だからこそ、危険度の選別だけは死に物狂いでやる。


 怪異というのは、観測されると "縁" ができる。

 見つかれば最後、向こうからやってくる。

 それが弱い怪異なら、さほど大事には至らない。せいぜい霊障を患う程度だ。

 が、たまにネットに転がっている怪談には、マジでヤバいやつが混じっている。

 そういうのは持ち前の勘で、事前に調査から外している。

 だけど稀に、いざ蓋を開けてみれば地獄なんて例外も。

 なのに、僕は性懲りもなく――


「それじゃー行くよ。今回で最後となる超危険な心霊調査――」


 また危険な調査に乗り出している。


「 "平坂高校の怪異・柳の下の幽霊少女" 。その謎を解き明かします!」




 事の発端は一週間前。学校の昼休みに何気なく見たスマホ。


「ん? なんだこれ……」


 メール欄に表示された『譟ウ縺ョ荳九?蟷ス髴雁ー大・ウ』という件名。

 スパムだろうか。こう文字化けされては不信感を拭えない。

 どうせ迷惑メールだろうと思い、そのままゴミ箱に送った。


 瞬間。


 ――『譟ウ縺ョ荳九?蟷ス髴雁ー大・ウ』。

 またもや新着に表示される文字化けメール。


「は?」


 おいおい、昼間から怪奇現象? さすがの僕も呆れ果てた。

 とはいえ、もしかしたら要望かもしれない。僕が運営するチャンネルは、よくファンからのリクエストを受ける。それは匿名で募集しており、冗談半分なのか、たまにチェーンメールを装って送られてくることも。


 きっと今回も、その手の悪ノリで送ってきたのだろう。

 まったく、憎めない演出をする。ここは乗ってやるか。

 僕は画面をタップしてメールを開いた。

 案の定、本分も文字化けしている。

 こういうときこそ、文字化け翻訳サイトの出番だ。検索エンジンを利用して目的のサイトへGО。件名と本分を選択してペースト。いざ翻訳スイッチОN。

 すると、表示されるメール内容――


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 件名:柳の下の幽霊少女


 本文:拝啓。【突撃! 隣の都市伝説】さま。

    あなたにお願いしたいことがあります。

    件名にもある怪談をご存じでしょうか。

    是非、このネタを取り上げてほしいのです。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ちょっと待て」


 僕は目を疑った。


「知ってるぞこれ」


 うちの学校の怪談だ。



 柳の下の幽霊少女。

 それは僕が通う高校『夜霞市立朝霧高等学校』に伝わる有名な怪談だ。

 草木も眠る丑三つ時。誰もいなくなったはずの学校で、髪の長い少女が夜な夜な校内を徘徊するという――まあ、どこにでもありそうな話だが、


 これは真実である。


 聡明な読者諸君なら、幽霊を指していると思われるだろう。

 しかし、この幽霊少女は実在しており、学校の生徒なのだ。


 柳夕麗。

 朝霧高校普通科二年三組。出席番号三〇番。

 黒髪ロングに切れ長の瞳。透き通るような白い肌。お菊人形を思わせる和風の美貌は、同じクラスの僕から見て、否、客観的に見ても絶世の美少女と断言できる。


 だというのに。


 彼女に近づいた生徒は、ほぼ例外なく不幸に見舞われる。

 告白した男子が不登校になった。

 話しかけた女子が事故に遭った。

 放課後に尾行した連中が倒れた。

 すべて、柳の木の下で起こった出来事。

 そのうち、校内でこんな噂が広まった。


『柳の下には幽霊がいる』

『あの子と目を合わせると呪われる』

『街で会っても、絶対に話しかけるな』


 ……僕から言わせれば、彼らの判断は正しい。

 触らぬ神に祟りなし。見習うべき危機察知能力だ。

 もちろん僕は、柳夕麗が幽霊でないことは承知だ。彼女が柳家という霊能力者のなかでも、実力派の名家なのも。そして彼女の周囲で起きる不幸は、彼女に近づく怪異の "おすそ分け" であることも察している。


 だから僕は、絶対に関わらないと決めていた。

 ろくに戦えない僕が本職に近づくなんて、命がいくつあっても足りやしない。

 なのに。


「…………」


 スマホの画面を見つめたまま、僕は固まった。

 昼休みの喧騒が遠い。購買のパンを半分食べかけたまま、もう片方の手でスマホを握り、僕は現実から切り離された気分で画面を確認する。


 三百万円。

 口座の残高が、三百万円増えている。


「は……」


 声が出た。情けないくらい間抜けな声が。

 見間違いかと思って目を細めてみたが、数字は変わらない。三百万は三百万だ。僕の貯金が急に世界一になったわけでも、スマホが壊れたわけでもない。

 原因のメールを、もう一度開く。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 本文:――手段は問いません。

    見事、今回の依頼を調査・考察していただければ報酬に

    一千万円を支払います。まずは、先払いとして三百万。

    完成すれば残りの七百万円を支払うことを約束します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「正気かよ」


 一千万だぞ、一千万!? 僕が配信で稼ぐ額の、ざっと何倍だ!?

 そんな大金を、身元も明かさない依頼人が、口座番号すら教えていないのに振り込んできた!?


 常識で考えれば、詐欺の類だ。

 そう、常識で考えれば。


「……一千万……」


 つぶやいた瞬間、僕の理性は盛大に音を立てて崩壊した。




 その日から僕の調査は始まった。

 もうネタは決まっているし、真相も知っている。あとはそれをどう視聴者に見せていくか、腕の見せ所だ。


 手始めに同業者(ホラー動画やSNSを運営する個人)のネタを確認。

 すると出てきた『柳の下の幽霊少女』。怪談の記事が表示された。

 やはり、どの投稿も触れているのは表面だけ。真実には辿り着いてない。

 すでに真相を知っている優越感と、大金が約束された将来にほくそ笑みながら、僕は彼らの記事を参考に執筆を開始、勢いで書き進めていく。


 脚本は一日で完成した。全部で四回分。会心の出来だ。

 さっそくSNSで告知をする。とたんに歓迎される僕の投稿。

 ああ、言ってしまった。しかし発表したからには、やるしかない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ