戦い前夜。初武器。
小説の書き方の模索中です。
読みにくいとかの感想を教えて欲しいです。
▶︎ 前半:レオン視点
▶︎ 中盤:ヴァルド視点
▶︎ 後半:リオン視点
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## 夜 ― レオン
対練が終わった後も、レオンの胸の奥に違和感は残っていた。
水を飲みながら、何度も動きを思い返す。
自分の突きは正確だった。
踏み込みも、間合いも、判断も間違っていない。
それでも、届かない。
避けられた、というより――
“噛み合わなかった”。
リオンは無意識だった。
嘘ではない。あれは本当に何も分かっていない顔だった。
だからこそ、怖い。
レオンはその足で、神木の根元へ向かった。
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## 神木の根元 ― ヴァルド
「どうした」
ヴァルドは振り向かずに言った。
レオンは一瞬だけ迷ったが、はっきり言う。
「リオンの動きがおかしい」
ヴァルドは目を細める。
「具体的に言え」
「今日リオンと対練をしたんだ。だが、俺の攻撃が届かない。読まれているわけでもない。だが、半拍早く動いている」
ヴァルドは沈黙した。
「……父上」
レオンは低く言う。
「滝で襲撃してきた連中と、関係があるのではないか」
そこで、ヴァルドはゆっくり振り返った。
「おそらくある」
即答だった。
「とりあえず、母さんの晩ごはんを食べに帰ろう」
そう言って2人は帰路についた。
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## 魔獣と魔族の違い
エリシアの温かく美味しいご飯を食べた後、ヴァルドは二人を呼んだ。
夜の焚き火の前、リオンも座らせる。
「お前たちに話しておくことがある」
リオンはきょとんとしている。
レオンは真剣だ。
「滝で襲撃してきた者たちは――魔族だ」
「魔族?」
リオンが首を傾げる。
「魔獣とは違う」
ヴァルドは地面に枝で図を描いた。
「魔獣は自然発生する魔物だ。
等級は――
初級 → 中級 → 上級 → 特級 → 災厄級」
リオンは頷く。
それは教わってきた知識だ。
「だが魔族は違う。
魔王によって創られた存在だ」
レオンの目が鋭くなる。
「魔王……」
「魔王ヴァルグリム。
約七百年前に出現した」
焚き火が小さく爆ぜる。
「魔族には階級がある」
ヴァルドは続ける。
「七階級だ。
魔王
四天王
大魔公
魔将補佐
上位魔族
中位魔族
下位魔族」
リオンは思わず息を呑む。
「滝に来たのは?」
「上位以上だ」
レオンの拳が強く握られる。
「お前達は魔族の襲撃に備えて強くなる必要がある。」
ヴァルドは一度目を伏せてから口を開いた。
「魔王の瘴気は、周囲の魔獣にも影響を与える」
「本来なら中級であるはずの魔獣が上級になる。
上級が特級に近づく」
「だから最近、森の魔獣が強い……?」
リオンが言う。
「そうだ」
ヴァルドは立ち上がる。
「明日、2人には森に行き魔獣の討伐をしてもらう。」
レオンが目を上げる。
「お前達2人は強くならねばならん。来る日に向けて」
夜の焚き火も燃え尽き灰となる夜更けごろ
ヴァルドは立ち上がり、家の奥から長い包みを持って戻る。布を解くと、鈍い蒼光を帯びた三叉槍が姿を現した。
リオンは息を呑む。
刃は深い銀色。中央の穂先の根元には青い結晶が埋め込まれている。柄には細かい鱗のような紋様が浮かび上がっていた。
「……兄ちゃんのと、同じだ」
レオンが背負う三叉槍と酷似している。ただし微妙に意匠が異なる。刃の角度、結晶の形状、柄の彫り。
ヴァルドは槍を両手で持ち、リオンの前に立った。
「これは、我が祖父の遺したものだ」
焚き火の火が、ヴァルドの横顔を照らす。
「祖父は水を司る龍だった。死後、その鱗と心臓――ドラゴンハートを用い、二本の槍が鍛えられた」
リオンは黙って聞いている。
「一本はレオンに渡した。もう一本は私が使っていた」
ヴァルドは槍を差し出した。
「今日からお前のものだ」
リオンの指が震える。ゆっくりと槍を受け取る。重い。だが、拒まれる感触はない。掌に吸い付くように馴染む。
「……父上」
レオンが静かに問う。
「時期尚早では」
ヴァルドは首を振った。
「遅いくらいだ」
リオンは槍を構える。空気がわずかに張り詰める。
「この槍には幾つか機能がある」
ヴァルドは淡々と言う。
「その一つが、変化だ」
槍の中央部に触れる。青い結晶が淡く光る。
刃が縮む。柄が圧縮される。三叉は一瞬で姿を変え、腰に収まる短剣へと変化した。
リオンは目を見開く。
レオンの腰に常に下げられている短剣。その意匠と酷似している。
「……あれ、兄ちゃんの」
レオンは無言で頷いた。
「携帯用だ」
ヴァルドが言う。
「常に身に付けておけ。命は、備えの有無で分かれる」
リオンは短剣を手に取る。冷たい金属の奥に、鼓動のような微かな振動を感じる。
「……俺に、使いこなせるかな」
ヴァルドは真正面から見据える。
「使いこなせ。そうでなければ死ぬ」
焚き火が爆ぜる。
その夜、リオンは眠れなかった。短剣を腰に差したまま、何度も抜き、何度も握り直す。
遠くで森の風が鳴っていた。
――翌朝、二人は森へ向かう。
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