戦闘と。戦闘。
【第三十話 森の共闘】
森は湿り気を帯びていた。
森に入り数時間が経ち、数度の戦闘を経て2人の動きが自然と最適化される。結果、レオンが先行しリオンが半歩後ろにつく。
足元の落ち葉が沈み音を吸い込む。
「右、低い」
レオンの声。
茂みから飛び出したのは狼型魔獣。体長二メートル。牙が剥き出しだ。
レオンが踏み込む。突きが一瞬で魔獣の喉を貫く。
その直後、背後から二体目が跳ぶ。
「来る!」
リオンは短剣を抜いた。瞬間、青い光が走り、三叉槍へと変化する。
木製ではない本物の重量。腕に衝撃が伝わる。
狼の爪を受け止める。金属と牙が軋む。
三体目が横から迫る。
リオンは半歩下がる。重心を沈める。槍の柄で顎を打つ。
わずかな隙。レオンが仕留めた。
三体沈黙。
「動きが揃ってきたな」
レオンが言う。
リオンは息を整える。
「兄ちゃんが速いから必死だよ」
奥へ進む。
次に現れたのは鹿型魔獣。角が異様に長い。上級。
突進。一直線。
レオンが側面に回る。リオンは正面を受ける。
衝突寸前で槍を横に滑らせ、角を逸らす。重い。地面が抉れる。
レオンの刃が頸を裂く。
さらに木々の上から影が落ちる。猿型の魔獣。中級だが瘴気が濃い。
三体同時。
距離は十歩。
「散るぞ」
レオンが左へ。リオンは右へ。
猿が飛ぶ。空中。
リオンは槍を逆手に持ち替え、腹部へ突き上げる。骨に当たる手応え。血が落ちる。
二体目が背後に着地。
振り向くより早く、短剣形態へ変化させる。体を低く滑らせ、足首を断つ。
レオンが最後を仕留める。
静寂。
昼ごろになり、小川に出た。
レオンが狼を捌く。リオンは火を起こす。
母のエリシアから渡されたパンを取り出す。焼いた肉を挟む。
脂が滴り、湯気が上がる。
リオンはかぶりつく。
「……うまい」
レオンは無言で頷く。視線は森の奥。
「瘴気、濃くなってる」
空気が重い。
食事を終え午後となる。
森の奥で巨大な足跡を見つける。
熊型魔獣。特級。
全高三メートル。毛は黒く、眼は赤い。
距離二十歩。
熊が咆哮。突進。
レオンが左へ跳ぶ。リオンは正面から受けず、斜め前へ滑る。
爪が空を裂く。
リオンは槍を熊の脇腹へ突き立てる。硬い。鱗のような皮膚。
熊が振り向く。距離三歩。
爪が振り下ろされる。
リオンは一瞬で短剣形態へ変化させ、身体を沈める。爪が頭上を通過。
再び三叉槍へ。下から顎へ突き上げる。
熊が後退。
レオンが側面から目を狙う。穂先が眼窩に沈む。
熊が暴れる。地面が揺れる。
リオンは踏み込む。心臓の位置を見定める。曾祖父の鼓動が槍に重なるような錯覚。
突き。
刃が深く沈む。
熊が崩れ落ちる。
森が静まる。
二人はしばらく動かなかった。
「……終わったな」
レオンの声は低い。
リオンは槍を見つめる。血が滴る。
「重いな」
言葉は短いが、表情は引き締まっていた。
帰路、二人の足取りは揃っていた。
神木の根元でヴァルドが待つ。
「特級か」
報告を聞き、目を閉じる。
「瘴気は確実に広がっている」
そして、リオンの腰の短剣を見る。
「その槍は、お前を試す」
リオンは無言で頷いた。
森の奥から、冷たい風が吹いた。
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