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【本編完結済】殺戮の皇女  作者: イチノセ
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122  終幕へのソナータ - 6

僕の、望みは。

ただ、すきだった女の子を守りたかった。


それだけだったはず、なのに。




【自分が何を間違えたのか。何をしていればあの結末を避けられたのか。いくら考えてもわからなかった】




玲華、キリル、シシィを手の上に。マリン、アラド、ベンクを背中に乗せ、シルヴィオは空を駆ける。


今は空高くを飛び、状況を把握しよう、ということになっている。そのため、今はほぼ垂直に雲を突っ切っていた。


しかし、シルヴィオの硬い鱗に掴まっていると、不思議と恐怖感は感じなかった。安定している、というか。小型飛行機に乗った後に、大型の飛行機に乗ったような。安定感の違いがある。




【僕は酷く子供で、守りたいものを守りきる力が無かった。無かったから、力を求めた。すきな女の子を守れる力が欲しい。それが叶う力が欲しかった。だから、美沙夜の言葉に頷いて、【神人】になった】




けれど、得た力は九龍院に制御され、さらには好きだった少女さえも【神人】となって。名前を捨て、朧げな『世界を創った』という記憶以外の全ての記憶を消され、胸の内に燻る“シルヴィオだった頃の記憶”に思考を揺さぶられて。




【僕はどうすれば良かった?何をすれば良かった?どんな選択を、いつすれば、ヴァーニアを救えた?どんなに考えてもわからない。正直、どうすれば彼女を止められるかだって、わからないんだ】




シルヴィオの翼が大きく羽ばたいて風を切り、ぶわりと雲が晴れる。


ジェットコースターの降下する直前のような、山の頂点に一度静止するような感覚で、シルヴィオが空中で上昇を止める。


大きな羽ばたきで雲を晴らしていくと、徐々に視界が晴れ、城や城下町が鮮明に見えてくる。




「あれは──?」


「【神々の泥】ですね。先ほど話した、シルヴィオたちの世界を呑み込み世界を一掃した死の化身」


「あんな悍ましいものが……」


【また、か。この景色を見るのは2度目だ】




神に昇格したヴァーニアの元に向かって、聖獣としてドラゴンになったシルヴィオが昇って行った時。まさにその時、世界は泥に呑まれて黒に染まった。




「でも見てください、玲華。皇城の周囲だけは泥が無いみたいです。……近付けないのかしら?結界?」


「イル・バガットかも知れないわ」


「そうだな。彼なら皇城全体に結界を張るくらいならできるだろう。どうする?合流するか?」


「イル・バガットの結界を破ることになりますけど、出来るんです?」


「半球の頂点にシルヴィオが通れるくらいの穴をあけて、通過したらすぐに私が治す、でどう?結界は卵の殻みたいに硬質じゃないし、内側から更に頑丈な結界を私が張れば……」


「そうだな、それがいい。他の転生者たちと意思疎通をして、策を練ろう」




そうと決まれば、行動に移るのはあっという間だった。シルヴィオは降下し、玲華が穴をあけ、ざわめく国民や宮廷魔術師の声を聞きながら、結界の中に入って穴を塞ぐ。


庭師たちが手塩にかけて育てた薔薇園の薔薇たちの上に仕方なく降り立った。既に彼らは、逃げてきた国民に踏まれたり場所の確保のために切られていて、以前の面影しか感じないくらい無惨な姿になっていたけれど。


地に落ちた薔薇は、それでもなお綺麗だった。




「内側からまた結界を張るわ。暁人とマリン、アラド、ベンクはイル・バガットやお兄様を探して。シルヴィオは少し休んで。シシィは、私が結界を張り終えたら、一緒に策を考えましょう」




手持ちの宝石全てを触媒に、頑丈な結界を張る。『無尽蔵の魔力炉』から出せるだけの魔力を引っ張り出して宝石に込め、結界を張る。


既にある結界の内側にピッタリと寄り添うように。仮に外側が破れても、内側の結界には傷一つつけられないくらい、頑丈で堅牢で、攻め込まれる隙が無いものを。




「高価な宝石を、惜しげもなく使うのですねぇ」


「ああ、これ。人工宝石なんですよ。宝石が産出される国というだけあって、宝石魔術師が宮廷魔術師の2割に満たないくらいを占めるんですが、どうしたって予算がかかるので。イル・バガットが趣味で作っている人工宝石を使っているんです」


「……へぇぇ。この世界で人工宝石ねぇ」


「…………あ、れ?」




そうだ、なんで疑問にも思わなかったんだろう。




────あるわけ、無いじゃない。この世界に、人工宝石なんて。




設備と、素材と、知識が無ければ出来るはずがない。


知識、知識……ちし、き……?




「そう、いえば」


「?……どうかしました?」


「私が、高校3年の時の化学の担当教師が、学校の設備を借りて、人工宝石を作るのが好きで趣味なんだって、言ってて……」


「何それ、大丈夫なんです?」


「もちろん、使う分の素材は自腹から出していましたし、学校の許可も貰ってました。サイエンス部の顧問で、部活動の一環でもあって……」


「ふぅん、それで?」


「その先生って実は……嗚呼、そうだ。そうだった!なんで忘れてたんだろう」


「???」




シシィを振り返って、玲華が言う。




「あの先生は──」

次回更新は5月7日の12時です。


GWの特別企画として、完全新作小説を連続投稿いたします!

本作のようなシリアスっぽさは一切無く、ほっこりジレ甘な、異世界“風”の和風ファンタジー小説です。日本ではないけれど、日本っぽい。もの○け姫をイメージしていただけるとわかりやすいかと思います。

バトルシーンや小難しい事情は一切無しの短編小説です。必要なシーンだけを短く、とんとん拍子にサクサク進むような感覚で書いています。毎晩の歯磨きタイムにサクッと読める、くらいのイメージです。


投稿後、URLを下に貼り付けますので、是非とも読んでいただけると幸いです!自分史上最も好きだなぁ、と思えるライトな作品ができました。自分でもすごく納得のいく出来です。是非是非読んでください!!




【花影のさくら】

https://ncode.syosetu.com/n7959ie/

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