5 断念
さて、小説の投稿も済み、ついでにイラストも何枚かイラスト投稿サイトにアップした。その頃にはブログの存在も知って書き込みなどもはじめた。読んでくれる人がいるかは甚だ疑問だったが、これをきっかけに自作品を読んでくれる人もいるかもしれない。が、そんなことはもうどうでもいい。今はゲーム製作ソフトだ。
前回迷い込んだ手順を思い出しつつ、フリーゲーム紹介サイトを延々とさまよう。が、なかなか出ない。なぜだ? 前回は意識せず辿り着けたではないか。それから悪戦苦闘すること数十分、検索サイトやリンクを駆使してどうにか目的の場所へ辿り着いた。まるで生まれて初めて書店の十八禁コーナーに入ったかのような高揚である。
震える手を抑えつつマウスを操り、紹介されているフリーのゲーム製作ソフトを品定めする。見れば結構あるもので、ノベルゲームのみならずRPGやSLGまで作れるソフトがあるので驚いた。自分が今までプレイしたフリーゲームもフリーソフトで作られているものもあったのである。
紹介文を見れば初心者向けとか、素人でも作れそうなソフトさえある。そこで上、中級者向けのソフトは避け、自分でも作れそうなソフトを何本か落とした。
結局、二時間で帰るところを若干オーバーしてしまった。ゲームならダウンロードに少々時間がかかっても途中で帰ることもできるが、今回はどれが使えるソフトか分からない。一本でも多く持って帰って悔いを残したくなかったのだ。
さあ、いよいよ帰宅してお待ちかねの起動だ。やはり遊ぶ分にはRPGが鉄板であろう。早速、唯一のRPG製作ソフトを解凍。
が、いじり始めて一時間で断念する事となる。非常に丁寧なチュートリアルが同梱されていたのだが、もう自分には理解の埒外である。考えてみればゲーム内のお店で買い物をしたときや、敵と戦うときに高度な計算が行われているのは分かりきってる。その計算式を作る作業だけでも大変な労力だ。そこまでする熱意はさすがにない。自分の浅はかさを再確認すると同時にフリーゲームクリエイターに尊敬の念を禁じえない。
大体素人がいきなり手探りでRPG製作に乗り出すこと自体無理がある。別に大作級ゲームをデビュー作に引っさげて、世間の度肝を抜きたいとかいう野心があるわけでもないので妥協はいくらでもきく。
やはりここは小説家らしく難易度の低そうなノベルゲームから無難に手をつけてみることにする。
実は自分はノベルも結構好きで、昔からよくやっている。フリーゲームにも良作が沢山ある。なんといっても十八禁ゲームはADVかノベルしかないと言っていいほど定番中の定番だ。更に告白すると、自分が好きなフリーゲームクリエイターが使っているソフトと同じものをダウンロードしておいた。落としたサイトでも、初心者が使うならコレ! と、太鼓判も押してあった。これで自分もその人と同じ土俵で勝負できると思うと心踊るものがある。いや、別に勝負したいわけでもないんだけどね。
だが、こちらも説明書を見る限り、なんとか、読むだけノベルなら作れそうな気がしたものの、いざ起動すると最初の立ち上げの手順がよく分からず結局詰み。それから更に数本、ACTやSLGの製作ツールも開いてみたが、やはり自分には使えそうになかった。
やはり素人にはハードルの高い夢だったかと諦めもついた。ゲームのためにいくつか考えたプロットはいつか小説にすればいい。小説では到底面白いとは思えない代物ばかりだが、それでもいい。どうせ自分の作品を読む人などほとんどいない。がんばって面白いものを書く必要もない。誰にも全く読まれない小説を書き続ける孤高な小説家。それはそれで格好いいではないか。
かくして自分のゲーム製作伝説は幕が上がることもなくその幕を閉じた、かに見えた。この後、意外なところから転機が訪れる事になるとは知りもしないで……




