2 企図
家庭の事情で家を出なければならなくなり、その際家庭用ゲーム機も処分した。やがて生活も安定してきて、またゲームをやりたいと思いもしたが、縁があって人生初のマイパソコンをゲットし、無職の期間を利用してこれまた人生初の小説を何本か書いた。野心を持って投稿するもあえなく撃沈。これらをただメモリの片隅に置いておくのもしのびないので、じゃあ小説投稿サイトにアップするかーと、実に安直極まりない考えの下に素人小説家デビューを果たしたのだが、やはり現実は甘くなく、自分の作品が読まれることなどほとんどない。色々調べると自分の投稿するサイトは挿絵が付けられる事を知り、じゃあイラストを描いていた経験を生かして挿絵も描くかと重い腰を上げた。幸い今はプロでも使っていそうな高機能なレタッチソフトが何本でもタダで手に入るので素人でもそれなりの絵が描ける。そしてなかなか楽しい。
だがそれで小説が読まれるかというとまた別問題である。やはり小説は小説で勝負すべしと思った次第。まあ、それでもさほど苦にはならない。自分の小説が見知らぬ誰かに読まれるというのはなかなかにこそばゆい。できれば読んでほしくないという矛盾した思考に陥る事もしばしばだ。自分の作品に全く納得できず、自ら命を絶つ天才ばりに繊細な精神など持ち合わせていないのである。
閑話休題。小説を投稿するため図らずもネットの世界に触れることになり、噂に聞いていたフリーゲームというものを手にできたのもこの頃だった。長らくゲームを断っていたため、その魅力に取り付かれるのに時間は全くかからなかった。たちまち虜となり、投稿作業のついでにフリーゲームを落として帰ってせっせと遊ぶ日々が続く。
ちなみに自分はネット環境を持っていない。作業は専ら仕事場近くのネットカフェに通うこととなる。だが当然ネットカフェは金がかかる。自宅にネット環境を構築するほどではないにしろ、五回も通えば大差ない金が飛ぶ。非正規雇用が道楽にするには些か危険な遊戯である。そこでネットカフェに赴くのは月に二回までと決め、極力作業にのみ絞り、その他の遊びは三十分以内に抑えるよう心がけた。自宅にネット回線を引かないのは金銭的な問題が大きなウェイトを占めるが、自分がネットを始めようものなら朝から晩までどっぷりハマるだろうという危機管理に因る。
だが残念な事に自分にはITスキルが決定的に欠落している。仕事場ではパソコンを使いこなすニイちゃんで通っているが、それは職場の人たちがマダムばかりだからである。つまり、マダムよりはまだパソコンが使えるといった程度で、それで給料を貰えるほどではない。したがって、投稿作業だけでほとんどの持ち時間を消費してしまい、軍資金を超過しない範囲の時間でそそくさと帰るという、なんとももどかしい日々が続いた。
そんな自分のパソコン音痴がフリーゲーム製作のきっかけになるのだから皮肉なものだ。いつものように慌ただしくフリーゲームやフリー音楽をじっくり吟味しつつ落としていると妙なところに入り込んだ。そこはフリーのゲーム製作ソフトを紹介しているページであった。激しく興味を引かれたが、ちょっと見た限り、やはりそれなりのスキルは必要であることは窺える。自分には無理だなとさっさと見切りをつけてすぐさまフリーゲームのページにアクセスし直す。そこで終わり。そう、終わったはずだったのである。




