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第33話 もう、一人じゃない

第33話 もう、一人じゃない


 黒い魔石が砕け散ると同時に、地下保管庫を包んでいた禍々しい魔力が霧のように消えていった。


 男は呆然とその場へ膝をつく。


「私の……研究が……。」


 力なく呟く声だけが響く。


 その時、保管庫の外から慌ただしい足音が近付いてきた。


「エリアス殿!」


 ガチャリと鍵が外れ、重い扉が勢いよく開く。


 駆け込んできたのは王宮騎士たちだった。


「ご無事ですか!」


「ええ。」


 エリアスは短く頷く。


「こちらの方をお願いします。」


 騎士たちはすぐに男を取り押さえた。


 男は抵抗することなく、静かにうなだれていた。


◇ ◇ ◇


 事情を聞いた騎士団長は深く頭を下げた。


「このたびは王宮内でこのような事件を起こしてしまい、誠に申し訳ありません。」


「誰も怪我がなくて何よりです。」


 エリアスは穏やかに答える。


「保管庫へ誘導した騎士も偽の身分証を使った協力者だったようです。現在、行方を追っています。」


 事件は王宮全体を揺るがす大問題となった。


 しかし、被害は最小限で済んだ。


 それだけが救いだった。


◇ ◇ ◇


 帰りの馬車。


 二人は並んで座っていた。


 しばらく誰も口を開かない。


 静かな揺れだけが続く。


「……怖くありませんでしたか。」


 先に口を開いたのはエリアスだった。


「正直に言うと。」


 マリカは少し考え、苦笑する。


「すごく怖かったです。」


 

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