表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/35

第31話 欲しかった力

第31話 欲しかった力


 重い扉が閉ざされた地下保管庫。


 エリアスはマリカを背中へかばいながら、目の前の黒い外套の人物を見据えていた。


「あなたは誰です。」


 静かな問いかけ。


 男は喉の奥で小さく笑う。


「名乗る必要はない。」


 ゆっくりとフードを下ろす。


 現れたのは四十代ほどの男だった。


 鋭い目つきには、底知れない執着が宿っている。


「私は長年、この国の魔導具を研究してきた。」


 男は静かに語り始める。


「だが、どれほど研究を重ねても、お前には勝てなかった。」


 視線はエリアスから外れない。


「王宮直属の天才魔導具師、エリアス。」


「……。」


「私の研究は評価されず、お前だけが称賛される。」


 その声には、長年積み重ねた嫉妬が滲んでいた。


◇ ◇ ◇


「だから魔導具を盗ませたんですか。」


 エリアスが静かに尋ねる。


「そうだ。」


 男は悪びれもせず頷く。


「少しずつ信用を失わせるつもりだった。」


 王宮で起きた魔導具のすり替え事件。


 あれも、この男の仕業だった。


「だが、それだけでは足りなかった。」


 男は不気味に笑う。


「ある文献を見つけてしまったからな。」


 その一言に、マリカの肩が震える。


「異世界人の固有スキル。」


「……!」


「《刻印》。」


 男がその名を口にした瞬間、地下室の空気が凍り付いた。


◇ ◇ ◇


「守る力。」


「絆によって成長する力。」


「そして、奪われることを拒む力。」


 男は恍惚とした表情で続ける。


「素晴らしい能力だ。」


 その視線がゆっくりとマリカへ向く。


「異世界人。」


 マリカは思わず息を呑む。


「やはり、お前だったか。」


「……。」


「エリアスを調べていて気付いた。」


 男は一歩近付く。


「最近のお前は、偶然では説明できないほど危険を避けている。」


「だから、お前の近くに能力者がいると考えた。」


 マリカの背中へ冷たい汗が流れる。


 気付かれていた。


「その力を手に入れれば。」


 男の目が狂気を帯びる。


「誰にも大切なものを奪われることはない。」


「違います。」


 思わず声が出た。


 男が眉をひそめる。


「この力は……。」


 マリカは震えながらも男を見つめ返した。


「誰かから奪うための力じゃありません。」


「守るための力です。」


 一瞬、地下室が静まり返る。


◇ ◇

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ