表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/35

第22話 大切な人の印

第22話 大切な人の印


 《刻印》の力に気付いてから数日。


 マリカは誰にもそのことを話さずにいた。


 エリアスに打ち明けようかと何度も考えた。


 けれど、自分でもまだ能力のことがよくわかっていない。


 不用意に話して混乱させたくなかった。


 だからもう少しだけ、一人で様子を見ることに決めていた。


◇ ◇ ◇


 その日の午後。


 二人は工房で新しい魔導具の組み立てをしていた。


「この部品を押さえていてもらえますか?」


「はい。」


 マリカが部品を支える。


 エリアスが魔力を流し込むと、魔導具は淡い光を放った。


「成功ですね。」


 ほっとしたように笑うエリアス。


「よかったです。」


 マリカも自然と笑みを浮かべる。


 最近は、こうして二人で作業することが増えていた。


 少しずつ、本当に助手らしくなれている気がする。


◇ ◇ ◇


 作業を終えたあと、エリアスは工房の棚から一冊の分厚い本を取り出した。


「これは魔導具師向けの基礎書です。」


「私が読んでもいいんですか?」


「もちろんです。」


 そう言って本を差し出す。


「工房を手伝ってくれるなら、知識もあったほうが楽しいでしょう。」


 マリカは両手で大切に受け取った。


「ありがとうございます。」


 本を開くと、魔石の種類や魔力の流れについて、丁寧な挿絵付きで書かれている。


「難しそう……。」


「最初はわからなくて当然ですよ。」


 エリアスは優しく笑う。


「ゆっくり覚えていけば大丈夫です。」


 その言葉に、マリカの肩から力が抜けた。


◇ ◇ ◇


 夕方。


 書斎で本を読んでいると、ふいに頭の中へ文字が浮かんだ。


『刻印対象 1名』


『信頼度上昇』


「え……?」


 思わず声が漏れる。


 文字はすぐに消えてしまった。


「信頼度……?」


 そんなものまでわかるのだろうか。


 首を傾げながら本を閉じる。


 今まで何も表示されなかった能力が、少しずつ変化している。


 それだけは間違いなかった。


◇ ◇ ◇


 夜。


 夕食の片付けを終えたあと、二人は縁側に並んで座っていた。


 夜風が心地よく吹き抜け、虫の声が静かに響いている。


「最近、本をよく読んでいますね。」


 エリアスが穏やかに話しかける。


「少しでも役に立ちたくて。」


 マリカは照れくさそうに笑った。


「エリアスさんが教えてくれること、全部知らないことばかりで。」


「楽しんでもらえているなら嬉しいです。」


 しばらく沈黙が流れる。


 気まずさはなかった。


 静かな時間さえ心地いい。


 ふと、マリカは左手の腕輪へ視線を落とした。


 そして心の中で、小さく呟く。


(この力があるなら……。)


(これからもエリアスさんを守れますように。)


 その願いに応えるように、腕輪が一瞬だけ淡く輝いた。


 しかし、その光に気付いた者は誰もいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ