フェニックスフレア
エアーは頬を染め、俺とサナーを食卓のテーブルに誘うと、並んで座った俺たろをテーブル越しから
「……向こうのナランに犯されそうになったんだ……それでボコボコにして聖塔の先端に全裸でくくりつけたところが始まりだ……」
いきなりバイオレンスなことを語り始めた。サナーがため息を吐いて
「そうそう。風呂で全部聞いたけど酷いんだよ。ナランも聞いてやってくれ」
「う、うん……」
エアーは気恥ずかしそうに
「そしたら、向こうのリースが怒って襲ってきたから、ボコボコにして聖塔の先端のナランの横に括り付けておいた」
「そ、そう……」
凄い大雑把な説明だけど何かめちゃくちゃ怖いのはなんでだろう……。
エアーは更に
「リースをボコボコにしたらリースの親?のヘグムマレーが全力で襲いかかってきたので教都でテンプルナイトとついでに教皇とかも倒しながら、ヘグムマレーもボコボコにして、聖塔の先端にリースとナランと並んで縛り付けたんだ」
俺が恐る恐る
「教都は廃墟に……?」
エアーは真顔で頷いて
「あたしは壊してない。できるだけ気を付けていた。向こうのやつらが無駄に派手に戦って聖塔以外は更地みたいになった」
そして大きくため息を吐くと
「教国を制圧してしまった私に、今度はドラゴンの群れが襲いかかった。古の教皇との契約らしい。稲妻を放つドラゴンのボスと死闘を繰り広げていたら、女神が現れて涙目で、もう帰ってくださいって……」
サナーはウンウンと頷いて
「ひどい話だよ。もう少しで世界の中枢を征服できそうだったのに」
いやそれは違うだろ……そこじゃねえよ……と俺が思いながら唖然としているとエアーは頬を染めた真顔で
「……ナラン、あたしと戦ってくれ」
なんでこの話の流れでそれを言われるのか分からないことを頼んできた。
しばらく絶句した後
「エアーさんは不完全燃焼なのか?」
「そうだ。弱すぎた。本物の戦士と全力で戦いたい」
「ちょ、ちょっと考えさせてくれる?」
この人と本気で戦ったら被害が大きそうだ。いきなり入口の扉が開いて
「女神に言われてタイミングばっちりで来たよー」
ノヴェナが入ってきた。そして空いているテーブル席に座ると
「エアーちゃん、ナラン君、傭兵会社がこの廃墟群の南側を更地にしたいらしくて、そっちで戦ってくれると助かるって」
「造成ついでにってこと?」
思わず俺が尋ねるとノヴェナは笑いながら頷き
「傭兵会社の業務命令ですよー社員のナランさん」
どうやらやらないといけないようだ。仕事次いでに強制的にやらせるとは女神も考えたものだ……。
三十分後、そろそろ夕方になる午後の日差しに照らされ、廃墟群南側にある高い石塔の頂上で、フル装備のエアーと、部屋着のまま向かい合っていた。サナーがうちの倉庫から引っ張り出してきた強そうな銀鎧を着たエアーの右手には抜き身に彗星剣レプリカが握られ、首には女神から貰っていた鈴付きの首輪が巻かれている。両目を輝かせたエアーからは覇気も殺気も大量に漏れているが、全く脅威は感じない。俺は大きく息を吐いて
「始める?」
「ああ、全力で殺す気で良いか?」
「うん。手加減は要らない」
エアーは金髪のおさげ髪を揺らして嬉しげにはにかみ、ブツブツと小声の早口で詠唱を始めた。一応、天使の翼を出しておく。
次にエアーがどう動くか分かった俺は、あえて棒立ちで待ってやる。詠唱が終わったらしいエアーは、残像を残しながら俺の右斜め後ろに瞬時に回り込むと
「滅せよ!ホーリーレイ!!」
叫んだ直後に周囲から光り輝く粒子がエアーの周囲に集束すると俺目掛け、太い閃光が放たれた。受けたところで大したダメージはないだろうが、部屋着が破れたりしそうだったので、天使の翼で舞い上がると、激しい光に包まれ崩壊していく下方の石塔の中から大量の光の矢が正確に俺目掛け照射されてくる。
ヒト達の世界で見た時より、遥かにレベルが上がったよなこの人。と思いながら横移動で全て避けて見下ろすと瓦礫になった石塔跡には既にエアーは居らず、左斜後ろから無数の光の矢が放たれ、そちらを向いた瞬間に、逆方向から数十メートル魔法の力を使い跳躍した、全身が光り輝くエアーが、両手持ちした彗星剣レプリカで凄まじい殺気と共に斬りかかってきた。
右手の人差し指と親指で剣先をエアーの鋭い斬撃をあっさり白刃取りできてしまったことに俺自身が驚く。そのまま左手をグーにしてエアーの鎧の腹あたりを軽く殴ったつもりだったが、銀鎧全体にまたたく間にヒビが入って、砕け散りながらエアーごと宙を吹っ飛んでいった。
自分の異様な攻撃力に焦りながら、地面に落ちたエアーを追い着地して
「だ、大丈夫?」
心配すると、素早く立ち上がったエアーは血反吐を吐きながらニヤリと笑い
「まだ終わっていない!私の仲間から貰った魂の奥義を喰らえ!フェニックスフレア!」
俺とエアーと辺りの廃墟群を凄まじい炎魔法の爆風と爆音と閃光が包み込んだ。




