どこの暗殺ギルド
聖塔の裏口付近に降り立つ、女神が「ナラン君から見て現在は私の支配下だから大丈夫」等とよくわからないことを言っていたが、信じて着地すると無人だった。そのまま内部に入り、パンメンとソバメンが安置されているはずの地下室へと急ぐ。
全く人と合わず、全速力で走ってたどり着いた地下室の扉を開けると、ちょうど司祭服を着たニャンギエフが抱き上げたパンメンの頭に齧りつこうとしているところだった。
「ほわちょー!」
女神が助走を付けた右脚が緑色に光るジャンプキックをニャンギエフの横っ面に叩き込み、体勢を崩したニャンギエフの背中を俺が両手で押さえつける。女神はニコニコしながら
「ニャンギエフ・フェルムビッチ容疑者!パンメン窃盗容疑で逮捕!」
虹色に光り輝く首輪をニャンギエフの首に巻いて、姿を消した。首輪もほぼ同時に消える。直後にニャンギエフは顔を上げると
「あにゃ……僕は何でパンメン食べようと……ウニャ?警備の人にゃ?」
俺が黙って頷くと、瞳孔を縦に細め見てきて
「見たにゃ?」
黙って首を横に振る。ニャンギエフはホッとした顔で
「君が話の分かる人で良かったにゃ」
そう言って大柄な身体を立ち上がらせ
「お礼がしたいにゃ。見たところ君はかなりの高レベルのようだし、僕の宿泊しているヒリュウ国大使館に来ないかにゃ?」
黙って頷く。ニャンギエフは大きな猫フェイスで偉そうに微笑みながら頷き、ゆっくりと部屋を出ていった。ついていくことにする。
警護のモンク達に大きな扉を左右に開けてもらいながら聖塔を正面からニャンギエフは出ていく。胸を張って偉そうに歩く大柄な猫人に黙って付き従うと、聖塔からすぐ近くの路地に入り、敷地の広い庭付きの屋敷の前で、門衛の厳しい顔の黒鎧姿の猫人に
「お客様だにゃ」
「大司祭、今日はこれからフタバ様が……」
ニャンギエフは心底面倒そうに
「あのビッチは待たせておけにゃ。もう僕のデカ竿にメロメロだにゃ」
聖職者とは思えない様な言葉を放つと、門衛から門を開けられ入っていく。俺も会釈しながら続く。
猫人のメイドから屋敷内の客間に俺は通され、待っていると、扉が開き、薄布一枚だけ羽織った3名の人間の女性達が入ってきた。十代半ばくらいの痩せた子、二十代前半くらいの背が高くスタイルが良い子、そして三十代半ばのふくよかで綺麗な熟女、目的は2秒で理解したので、立ち上がりできるだけ低い威厳ある声で
「必要ないと大司祭にお告げください」
そう言って女性達に頭を深く下げる。
女性達はあっさりと出ていってくれたので、ホッとしながら座り直し、多分、ローウェルだったら熟女をあっさり選んでただろうな……あのおっさん、マジで熟女好きだからな……などと思っていると、また扉が開き、褌一丁で猫耳が生えていて、長い黒髪と頬を染めた派手な顔、むき出しの大きな胸は両腕で隠していて尻からは二つ尾の尻尾が揺れ……おいおいおい!ニャンギエフマジでイカれてるだろ!どう考えてもナコミ帝国のフタバ姫だぞこの女性……。
フタバは恥ずかしそうにテーブル越しの席に座り、赤面して俯きながら
「……ナコミ帝国、上帝次女のフタバだよお。ニャンちゃんがさあ、あんたとこの格好で話せって」
全く言葉遣いがなってない挨拶をしてきた。少し話しただけで三女のミツハ姫と雲泥の差があるのが分かるとは……。面食らっているとフタバは頬を染めたまま
「……ニャンちゃんは、貢物の金塊数えてテンション上げてる。あんた強いんでしょ?ニャンちゃん、人を見る目は確かだから」
俺が黙って頷くと
「妹のミツハ殺してくれない?やってくれたたら何でもするよお?ナコミで私の側近にしてもいい」
ストレートに暗殺依頼してきた。
一瞬、驚いたが、汚い世界を冒険し続け、更に女神によって無茶苦茶に鍛えられた俺にはフタバの背後に居るニャンギエフの意図が手に取るように分かってしまった。頭の悪いフタバにいきなり核心を話させることで、俺との繋がりを強制的に作ろうとしているようだ。しかし、良い対処法は思いつかない。スペシャル神の裁きをニャンギエフに落とすのが手っ取り早いと思うが、未来でどえらいことをしていた超悪人を今回も裁きもせず泳がせているのは、女神の何らかの意図があるのは明白だ。
悩んでいるとフタバは胸から両腕を離して身体を見せてきて
「ほら!私、いい身体してるよ!?どう!?」
いきなり誘ってきた。いやニャンギエフと付き合ってるんだろ……貞操観念ないのか……それとも度胸が良すぎるのか……戸惑いながら
「フタバさん、自分を大切にした方が良い」
真面目な答えを返す。フタバは不貞腐れた顔で横を向き
「……嫌い。私が裸で抱いても良いってのに、その言い草はないだろ。○ン○ン付いてないのかい」
ブツブツ文句を垂れ始めた。俺は苦笑いして
「ニャンギエフ大司祭のこと、好きなんですか?」
踏み込んだ質問をしてみる。フタバは怪訝な顔で
「ニャンちゃんは優しい。私のこと馬鹿にしないし、妹や姉と比べたりしない。あんたはニャンちゃん好き?」
俺は少し迷ったが、この人にははっきり言った方が良いと
「嫌いです。他人を利用して悪いことばかりしている。フタバ姫も利用されていますよ」
フタバは絶句して固まった。
しばらく沈黙が流れ、フタバは真剣な顔で
「ニャンちゃんを殺しに来た?」
いきなり核心を突いてきた。この人は遠回りに探るとかできないらしい。俺は首を横に振り
「ある大きな組織の元締めから、ニャンギエフ大司祭を……そうですね、監視しろと言われていまして」
フタバは驚いた顔で
「嘘吐いてない……私は生まれつきスキルで嘘がわかるんだ……教皇?ウィズ公?ま、まさかミツハ……?」
俺は苦笑いして正直に言おうと
「違います。もっと遥かに闇が深い組織です。ボスはこの世で最も邪悪な存在ですよ」
あの邪神と天界はこの世の闇そのものだと思う……なんなんだよスペシャル神の裁きって……なんなんだよ時間旅行って……頭おかしいことさせられ過ぎだろ……。フタバは驚愕した表情で立ち上がると
「……ど、どこの暗殺ギルド……」
俺は笑って、もう答えなかった。
しばらく黙っていると、顔面蒼白になったフタバは、一瞬出ていこうとして大きく口を開け、気づいた顔で俺を見て、冷汗を垂らしながら
「あっ、あんたに乗り換える!」
「……?」
「ニャンちゃんはやめる!私はあんたと一緒に居る!あんたのがニャンちゃんよりヤバい!でもニャンちゃんより使えそうだ!」
「……」
褌を脱ぎそうになったフタバを慌てて手で止め、黒装束の上着を羽織らせる。そして
「あの……とりあえず、大司祭とは付き合ったふりしてもらえませんか?」
「う、うん……あんたが言うんなら……」
潤んだ瞳と唇で上目遣いで俺を見てきたフタバに
「話が付いたと大司祭を呼んできてください……俺はナランと言います」
「はあい……ナラン様あ……」
フタバは発情した顔をして、尻と尻尾を振りながら部屋を出ていった。う、うまくいったのか……?これ女神、俺を見ながら爆笑してるだろ!わかってるんだからな!




