あまりにも悪人
地上から赤や青や黄色の魔法弾を大量連射されながら
「あーはっは!ニャンニャン共の叫び声が気持ち良いわ!当たらなければ空砲以下よ!」
などとリースの声で女神がうるさい。リースの声と身体で何時もの頭がおかしいパフォーマンスをしないで欲しい。目と身体が慣れてきたので、ちょっと身体の角度を微調整して、前方から飛んできた電気を帯びた黄色い魔法弾をあえて身体と翼をギリギリ下げて避け、背中の女神に当ててみると
「あーたのしー!えっ……ちょっ!ぶえっ!おぶはあっ!うげろおお!!」
断末魔を上げ、背中が急に軽くなった。マジか……魔法弾がクリーンヒットして身体ごと消滅したよ……全知全能の神じゃねえのかよ……普通避けるだろ……どうなってんだあの邪神……。
心臓の動悸が収まらないまま、とにかく必死に大教会前の猫の獣人達が数万人集まっている広場中心で、太った長身猫人が頭をはめられているギロチン台真横まで降下する。布を頭に被った死刑執行人達は蜘蛛の子を散らすように逃げていき、周囲に集まった人々が悲鳴をあげる。
「血塗られた悪魔がきたにゃー!」
「とうとうあのアホが悪魔召喚したにゃー!」
「我が国ももう終わりだにゃー!」
「女神様いい加減助けてくださいにゃー!」
俺は違和感がある背中を触ってみて何故、猫人達が怯えているのか意味が分かった。リースに成りすました女神が魔法弾ではじけ飛んだ時の血が大量に背中や翼にこびりついている。額からも血が垂れてきた。めちゃくちゃ迷惑だな女神……マジでなんで魔法弾に当たってるんだよ……そりゃ、当たるか試した俺も悪いけど……などと混乱した頭で思いながら、ギロチンにはめられたニャンギエフを見下ろすと、太った大きな猫顔を涙目にして
「あああああ悪魔でもいいにゃ!助けてくださいにゃああああ!!」
泣きながら懇願してきた。
しばらく見下ろしていると、ギロチンが落ちたので慌てて装置横の紐を手に取りギリギリで止める。ニャンギエフは
「ああああああ!フタバを抱きつぶして薬漬けにして娼館に捨てたことも!ナコミ帝国の反政府勢力と繋がってヘルムマレーと上帝を暗殺したことも!教国で不正してる異端審問官を脅迫して資産を殆ど巻き上げたことも!王国の反政府勢力に資金を流し続けたことも!二年十一ヶ月前にパンメンを少しだけ食べるつもりが美味しすぎて全部食べてしまって、ついでにソバメンも全部食べてしまったことも懺悔するにゃああああ!ごめんなさいいいいいいい女神様ああああああ!!たしゅけてえええ!」
あまりにも、あまりにも悪人過ぎて俺はギロチンの紐を自然と離してしまって、目の前にでニャンギエフの首がゴロゴロと転がった。同時に周囲の景色が薄れていく。
気付くと森の中の見覚えがある石畳の上立っていた。横にはスクール水着を着た女神も満面の笑みで立っていて
「よろしい!未来の調査、いったん終わり!現在に帰ってきたから!今すぐ私を連れて直ちに聖塔の地下室に向かうのよ!」
俺の背中に飛び乗ってきた。釈然としないまま天使の翼を生やし空へと舞い上がると女神は
「未来の因果はもう殆どシーネちゃんに握られてて、私は未来ではもはや無力なの!それでリースちゃんに成りすまして隠れてたり、魔法弾にも当たるわけ。我が娘は中々優秀でしょ?偽娘かもしれないけどね!」
楽しげに意味不明なことを喚いている女神に、俺は翼を横にして風に乗って飛びながら
「地下室で何するんですか……」
「ん……?現在のビッグニャンニャンを現行犯逮捕するのよ?それ以外ないでしょ」
「……」
もはやよくわからないが、この邪神に付いて行って大丈夫だろうか……段々不安になってきた。




