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冴えない俺が、何でも教えてくれる魔法を手に入れたけど……  作者: 弐屋 丑二
高位存在による介入の損失計算と立て直し

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322/329

神と使徒のお通りだー!

 痩せこけたリースは生気を取り戻した顔で俺に抱きついたまま

「ナラン、もう全て手遅れだけれど……せめて私と、ニャンギエフ大司祭を助けに行きましょう」

「……説明してくれないか?」

リースは俺の身体を強く抱きしめると

「世界の混乱を収めようとして失敗し続けたあなたが……最後にやろうとしてたことよ?あなたは……そうか、昔のナランなのかあ」

全てを悟ったような顔で俺にキスをすると立ち上がり

「あなたの上着を頂戴」

俺は黙って黒装束の上着を渡す。それを着たリースは手櫛で金髪を直すと、頬がコケた顔でニッコリ笑い

「修行は終わり!ナランの翼で世界を救います!」

俺は頷いて2人で小屋を出ていく。


 早朝らしき外の景色は、特に変わりはなかった。天使の翼を出すとリースは愛おしそうにそれを撫で、俺の背中におぶさると

「大天使ナランよ!行くのです!」

嬉しそうに叫んだ。リースを振り落とさないようにゆっくり大空へと上昇して行く。


 教国のある島も様子は変わりなかった。リースは

「まず東へ飛んで。行き先は教えるわ、ヒリュウ国へ向かうの」

言われた通り飛び始める。横になって飛ぶ俺の背中に掴まったリースは

「ジン・スカイストリートはガセッタ王国に落ちたわ。多分、シーネさんがやったんじゃないかって言われてるけど……」

「女神様は?」

リースはしばらく黙って

「ずっと出てきてないって、ナランが……あなたはやっぱり違うのね……」

「よくわからないけど、とにかくニャンギエフ司祭を助けよう」

「うん……少し北東に飛んで」

「分かった」

それからリースの指示通り飛び続けるが、海を越え陸地の上空を飛び始めると白煙を上げたり魔法が飛び交う紛争地帯が目につくようになる。リースは悲しげに

「お父様が……2年前に教国で何者かに暗殺されて……それから一気に世界大戦に……」

「そうか……」

気になるが、ここは女神のアドバイス通り、ニャンギエフに集中することにする。聞けば聞くほど悲しい気持ちにしかならない。


 高い城壁に数十キロの広さを持つ広大な街が囲まれているヒリュウ国の首都は、恐らく数十万人の軍隊に完全に包囲されていた。上空から見下ろしていると、魔法弾が街から俺達めがけて飛んできて、咄嗟に避ける。

「正確だな」

「もう3カ月くらい包囲されてるからね。うまくもなるわ。噂ではニャンギエフ司祭の首と引き換えに降伏をしようとしてるって……」

俺はそこで気付いてしまう。隔離された島で痩せこけて寝ていた聖者が持っている情報量ではない。

「女神様……この世界でリースもう生きてないでしょ……」

「バレたあ?ナラン君もやるようになったわねえ」

背中から全く悪気ない声がして脱力して墜落しそうになる。リースに成りすました女神はリースの声で

「色々気にせず!まずは首都中心の大教会前広場の!ビッグニャンニャンを助ける!もうギロチンが落ちるから!急いで!」

俺は慌てて降下していく。高度を下げるたび首都内からは正確狙いで無数の魔法弾が連射され始めた。女神はリースの声で

「ひゃっはー!神と使徒のお通りだー!当てて見なさいよー!」

嬉しそうに騒いでいるが、俺はどうにか避けながら首都内の目立つ大教会の建物を目指して降りていく。

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