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冴えない俺が、何でも教えてくれる魔法を手に入れたけど……  作者: 弐屋 丑二
高位存在による介入の損失計算と立て直し

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レベルアップアイテム

 棺の蓋がずれると、驚愕の中身が出てくる。カビだらけの人型パン……細マッチョな体型で顔はまるで球形のパンの正面に平たいオリエントな顔が浮き出たような……不可思議な怪人が両目を閉じて寝ていた。パンで造られた全身はカビだらけで何も着ていないが、性器や乳首は無いので生々しくはない。ローウェルは怪人に

「聖者ジャエム・オ・ウジェイの創り給うたパンメン、アンペ・インメインよ起きろ」

人型パンはパチっと目を開け、ジロッと俺達を見ると低い声で

「そうか……終わりの時間か」

ゆっくりと上半身を起こす。


 ローウェルは冷静に

「無意識の世界の空間警護はどうだった?」

アンペ・インメインと呼ばれたパンで出来た怪人は苦笑いして

「長い……戦いだったよ……沢山の旅人を救い、そしてまた救われた。無数の者達を意識の底へ送った」

ローウェルは腕を組み深く頷くと

「この若い男は大天使ナランだ。こちらの女性はテンプルナイトのシュマリアさん。俺はローウェル、全員女神の知り合いだ。何か言い残すことはあるか?」

アンペ・インメインは冷たい天井を見上げ

「また、パンに戻るだけだ。もはやカビだらけで力が出ない。一思いにやってくれ」

ローウェルは頷くと、アンペ・インメインの首に虹色の閃光が一閃し、カビたパンで出来た頭と胴体が離れた。ほぼ同時に「カチャリ」と刀を鞘に戻す音がする。


 ローウェルはアンペ・インメインの首が落ちる前に右手で受けとると

「シュマリアさんも食べるか?このカビは、ケイオスシュミエルと言って、混沌粒子の実体化したものだ。腹は壊さない」

シュマリアは顔を受け取ると、迷わず一かじりして

「美味しい……」

不思議な顔をする。ローウェルは苦笑いして

「これは極秘事項だが、最高のレベルアップアイテムなんだよ。食べるほどパンメン達が無意識の世界で戦った経験が流れ込むようになっている。なので世界の均衡を崩さぬよう、最も低レベルの大天使が食うことになっているが……」

俺を見てくる。

「どんくらい上がるんだ……?」

「一口、一レベルってとこだ。よく噛むと効果が少し上がる」

それを聞いたシュマリアは、冷たい床に座り、真面目に食べ始めた。

「おっさんは良いのか?」

ローウェルは真顔で頷き

「俺は要らねえ。ナラン、さっさと食え、ソバメンもまだ控えてるからな」

「わ、分かった」

棺の中、首の無い上半身を起こしたままのカビだらけのパンで出来た身体の切断面に、恐る恐る噛りつくと、異様に美味かった。そのまま夢中で食べ始める。


 棺の中が空になる頃には、俺は満腹でその場に座り込んだ。ローウェルがダルそうに棺の蓋を閉め

「禁煙なんだよなあ」

自分が食べ終えた後ずっと、俺が食べる様を見守っていたシュマリアは真面目な顔で

「一度、休憩しますか?」

「いや、このタイミングが良い。逃すと、パンメンを失ったソバメンが暴走するかもしれねえ」

「そういうこともあるんですね」

ローウェルは頷き、残った棺を横にずらし、大きくため息を吐いてくる。俺も中を見ると、そこには紫の肌以外、完全に造形が背の低い女子な人型が寝ていた。大きくない胸や痩せた股の辺りも妙に生々しく、全体がカビてもいない。髪の毛はないが楕円形の頭の顔は目鼻のはっきりした女子そのものだ。


 ローウェルは舌打ちをして

「ジェイムの問いかけだな……時々居るんだよ……こういうしょーもないことする聖者が……」

「カビてないな」

俺の横から覗き込んだシュマリアが

「肌が紫なだけで女の子ですね」

ローウェルは頷くと

「聖者ジャエム・オ・ウジェイの創りしソバメン、バターカー起きろ」

棺の中に問いかけるが、バターカーと呼ばれた異形は起きない。ローウェルはため息を吐いて

「狸寝入りしてやがる……シュマリアさん足の裏、ナラン腋、俺は腹だ。くすぐって起こすぞ」

言われた通り、全員でポジションについて一斉にくすぐり出すと、次第にバターカーの顔が悶絶していき、いきなり

「アヒャヒャヒャ!」

震えながら笑い出すと、慌てて上半身を起こし

「待って待って!起きたから!」

全員で一斉にくすぐるのを止めると、バターカーは素早く棺から出て、俺達から距離を取ると

「食べないで!私は女神の友達よ!女神に会わせなさい!」

意思の強そうな瞳で言ってきた。

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