久しぶりだにゃー
結局、一時間カワユは戻ってこなかった。黙って待っているのも飽きた頃、女神がニヤニヤしながら
「そろそろ来るわ」
直後に扉が開いて
「おーナラン君!久しぶりだにゃー」
何処かで聞いたことのある声がして、何と傭兵会社先輩で、戦場指揮官の猫人であるポトスンが入ってきた。しっかり赤いハットと、赤いジャケットを纏いお洒落をしている。
「何で、ここに……」
ポトスンは、カワユが座っていた椅子に座ると
「ん……?女神ちゃんに言われて、暴落してる王立建築会社の株を買い増してたにゃ」
俺が唖然と女神を見ると
「……実はビッグニャンニャンの兄なのよ。フェルムビッチ家は、ビッグニャンニャン以外は極めて出来が良いの」
知り合いだったらしい。しかもニャンギエフと兄弟だったのかよ……。獣人の顔の違いは分からない上に、兄の方が小柄なので全く気づかなかった。シュマリアが
「……ポトスン司令官、その節はお世話になりました」
ポトスンは肉球の付いた右掌を左右に振り、恥ずかしそうに
「沼地での立体防衛戦なんて仕事のうちに入らないにゃ。ローウェルも居たし、一時間程度の参戦で貰いすぎたくらいだにゃ」
良く分からないが、シュマリアと戦友だったこともあるらしい。
ポトスンは気を取り直した顔で
「で、カワユ大司祭から、ガセッタ王国臨時軍事顧問である僕が、異端審問の立会人に指名されたにゃ」
臨時軍事顧問……もう新事実ばかりで一々尋ねるのは諦め、俺は黙って聞くことにした。女神はニコリと微笑み
「計画通りね。純粋ガセッタ人をできるだけ関わらせず、ミサ姫を闇に葬るつもりだわ」
ポトスンは頷くと
「で、この国の乗っ取りは、もう完了するにゃ。唯一の後継ぎが消えるわけで、後はふさわしい養子を迎えるだけだにゃー」
俺をジッと見てくる。何か怖い話になってきたので目をそらしていると、女神が笑いながら
「まーだミサ姫が改心するって未来のパターンが残ってるわ!」
ポトスンは立ち上がると
「じゃあ、行きますかにゃ」
そう言ってきた。
家の外の路地には、荷車に大きな黒馬が連結された馬車が繋がれることもなく停まっていた。筋肉が盛り上がった見事な黒馬にポトスンは手を挙げ
「ビニャメン頼むにゃ」
そう言うと御者席に乗り込む。俺達も荷車に乗ると、ゆっくり馬車は進み始めた。
少し速度を上げたが、安全運転で馬車は人で溢れた街中を進み、城門から出ると飛ぶような速度になった。荷車から落ちぬように身をかがめていると、気持ち良さそうに女神と並んで座り風を浴びているシュマリアが
「ビニャメンとは聖鉄騎ですか?」
ポトスンは手綱を握ったまま振り向かず
「そうだにゃ。そこから付けてるって、ビニャメンが言ってたにゃ」
「お馬さんが言っていたのですか?」
女神がニヤニヤしながら
「細かいことは良いのよ!ミサ姫と会えるのが楽しみ!」
そう言った。
一時間かからず、大きな湖のほとりにある高い壁に囲まれた城のような監獄へとたどり着く。門衛達はポトスンの姿を見ると、何も言わず門を開いた。馬車ごと中へと入って行く。




