雑談
焦った俺は立ち上がり
「あ、あの、ガセッタ王国の上に来てるんですよね?」
マリオンヌはスライムボディを揺らして頷くと
「そうだね。現地視察行く?今、王都上空だよ」
「そうさせて貰って良いですか?」
「女神の想定ルートにはめ込まれてると思うよー?視察なんて行かずに一気にガセッタ滅ぼしちゃえば良いのに」
「い、いや、そうはいきませんって」
俺は足早に部屋から出ていく。
「行ってらっしゃーい」
マリオンヌの声を背中に聴きながら、足早に屋敷の玄関まで行き、天使の羽根を出して飛び出した。冗談じゃない。ちゃんと現地を見てから、消すとか滅ぼすとか決めないと、絶対後悔する。ボードゲームじゃないんだ。人が住んでるんだぞ……。
大きな街へ降下しながら、ふと気付いて、自分に右手を向け
「気配の消失スキルよ。付け!」
言ってみる。特に何も変わった様子がしない。いきなり頭の中でリブラーの声が
気配の消失、スキルを追加しました。ナランさんはスキル変更不慣れなので我々リブラーが付け変える方が早いようです。これで隠密行動も容易いはずです。
微妙に煽ってきてムカつくが、一応心の中で感謝しつつ、眼下に広がる広大な城塞都市へと降りていく。
とりあえず、大きな城門上でダラダラ喋っている若い男女の兵士達の横に着地し雑談を聞いてみることにする。背の高い金髪の女と、横に広い黒髪男の組み合わせだ。2人とも鉄兜を外し、城壁に寄りかかり完全にリラックスしている。女が
「結局さあ、カジノが大事なわけ。ミサ姫が港町に1個ずつ作ったでしょ?外国人がたくさん来て、あれで、うちらの給料も上がったってこと」
男が苦笑いしながら
「まあねえ。でもジャンキーとか借金漬けの人が増えてるよね」
「必要な犠牲でしょ?税収があがれば良いじゃん。うちらはカジノ行かなきゃいいし、依存症のクズどもは勝手に破滅しろよって思うけど」
「いやでもなあ。計画ありきでミサ姫はやってきたけど、どうなんだろうか。俺知ってるんだよ」
「何を?」
「銅とか出る山って、儲かるからっていい加減に掘ったら周辺の住民が変な病気にかかるんだよな」
「それとカジノと何の関係が?」
「ミサ姫がやってるのは同じことだろ?儲かるからって、カジノ建てまくって不幸もまき散らしてる」
「そう言うこと考え出したら何もできなくなるでしょ?税収と経済は良くなってるけど?」
「そうかなあ」
「あのね、政治ってのは、ほぼ失策ってパヤオンヌ・ザッケーマという昔の偉い哲学者が言ってたわ。政治家も私たちと同じ凡人の集まりだから、上手くいく方が難しいんだって」
「それはわかるなあ。王族って世襲だし、議会や首相とかも頭良さそうで、よく見てたらほぼ駄目だろ?あれ何でか分かる?」
「バカだから?」
「違う違う。日々の書類仕事や議会や会合で忙殺されるからだよ。議員って体力いるんだよ。殺人的な手続きの連続とかそういうの乗りこなした上で人脈作りとか出来るバケモンが幅を利かすのが議会なわけ。政治家の強い弱いって、理念とかの良し悪しじゃねえのよ。バイタリティだよ」
「でも、たまーにそういうしょうもない中に、ミサ姫のような美人有能超天才が出てきて国を変えるのよ!」
「どうだろうか……良さそうに見せかけてるだけでは?バイタリティだけはある王族や政治家が好き勝手やって後から俺ら国民がつけを払わされるって、山程見てきたでしょ?」
「それはミサ姫の深淵なるお考えを分からないあんたの底の浅さね。大体、国からお給料もらってるのに王族批判するとかさあ」
「それは確かだな。失言だった。仕事に戻ろう」
「そうしましょう」
2人は鉄兜を被って、城壁の上をそれぞれ巡回に行った。俺は難しい話を横で聞いていて、余計に事情が分からなくなってきたので、とりあえず、もっとこの国を見てみようと思った。




