敬虔な信徒
シュマリアは神の審判ルームに入った俺を認識できるようで
「ナラン様……」
頭を下げてきた。難しい表情をしたセーラー服姿の女神の横に俺が座ると、他召喚者と同じく一糸纏わぬシュマリアは大ぶりな胸を隠すこともなく背筋を伸ばして座り、生真面目な表情で女神に
「これが現実のことで、神の審判であるという認識をしていますが、私は教皇になる器ではありません」
女神は苦笑いして
「今すぐに、とは言ってない。でも、これからゆっくり教国の形を人々を導いて変えていくつもり。あなたは敬虔な信徒だから、中々分からないと思うけど、ド変態儀式とド変態教義と、汚職と犯罪のすく……じゃなくて、巣窟になってるでしょ?」
今邪神がすくつって言いかけたよな……俺が耳を疑ってるいると、シュマリアは頑な表情で
「女神様がそう言われましても、女神教の教えと儀式は素晴らしいものです」
女神はシュマリアの前に眼鏡を出現させると
「かけなさいな。私は永遠の小娘で、ナラン君は若者よ。ちゃんと現実を見なさい」
シュマリアは眼鏡をかけると背筋を伸ばし
「素晴らしいお二人です。見えるものに惑わされず内面を常に見よ、と聖書で教えられたのは女神様ではありませんか」
女神はテーブルに突っ伏すと
「あーもーめんどくさーい……もーやだーナラン君、シュマリアちゃんをみちびーてー」
脱力しながらそう言ってきた。
俺は突っ伏した女神に
「シュマリアさんを次期教皇にしたいんですよね?」
「そーでーす……でも真面目過ぎて引き受けない……」
俺は少し考えて
「シュマリアさん」
シュマリアは嬉しそうに
「はい、大天使ナラン様」
「女神様直々の頼みでもダメですか?」
シュマリアはニッコリ微笑み
「はい。聖書にはこうあります。自らを見極めよ。不相応は身を滅ぼす元である」
女神は顔を上げると
「それはさあ……ふつーの人向けに生活の知恵として言っただけでえ……あのね?こうも言ってるでしょ」
女神は大きく息を吸うと、神々しく光を全身から発し、威厳ある声で
「大海を泳ぐ龍は、海の流れや魚の数を知るべきである。あなたが動かす全てがそこにあるのだから。頭脳明晰、教国随一のテンプルナイトであるあなたに相応しいのはこっちの教えでしょ?」
シュマリアは全く動じずに
「それは大天使セイ外伝での女神様のお言葉ですね。申し訳ありませんが、聖書の主流ではありません」
女神の発光が一気に消え、またテーブルに突っ伏すと
「あーもー……ちゅうーせーじーん……違うんだってえ……教会が統治や布教に邪魔な文言を外伝に纏めてぶっ込んだだけでえ……権威主義が振り積もってえ、無難な言葉が残っていくのがさあ……うー」
突っ伏したまま横を向き、涙目で俺を見てくる。
俺は不思議な気持ちで
「本物の女神様に指名されてもダメですか?」
シュマリアはニコリと笑い
「私は、女神教の信奉者です。聖書で女神様はこうも言っておられます。全能な神ですら誤る。人の子よ、自ら考え、選ぶのだ。このお言葉は私はとても好きです」
俺は思わず笑ってしまう。シュマリアは女神のことを本当によく理解しているように思える。女神はデカいため息を吐きながら顔を上げ
「じゃーさー、教会改革を手伝ってくれる?」
シュマリアは背筋を伸ばしたまま頷いて
「はい。喜んで」
女神はダルそうに
「ナラン君、ジン・スカイストリートをご案内して。シュマリアちゃん、この天界への通行許可をあげるわ。詳しくはナラン君に」
女神はそう言うと、その場で服ごと全て溶けて床に滲むと、跡形もなく消えた。
とりあえず立ち上がり
「服、着ます?」
「いえ、このままで。神の審判とはこういうものだと理解しています」
「そうですか……」
とりあえず女神に言われた通り、シュマリアと屋敷を出る。彼女の身体付きがどうしても目に入ってしまうが、筋肉量が多そうな普通体型だ。痩せていても太っても居ない。バランス良く鍛えてるんだろうなと思う。
シーネによって崩壊した城門の説明や、ジン・スカイストリートは自由に動くことが出来、現在は教都上空にあることを街並みを歩きながら説明していると、側溝からマリオンヌが滲み出てくる。事前に話していたので動じていないシュマリアに
「さっき説明したマリオンヌさんです」
紹介すると、マリオンヌはジッとシュマリアを見た後
「もぐもぐしていい?」
プルプル揺れながら無茶なことを言ってきた。




