私を抱きしめて見せろ!
目を開けると、空中都市の側溝にはまっていた。横の道の上にサナーが居て、マリオンヌの身体の色によく似たゲル状の物質が散乱していた。側溝から起き上がって血色の良いサナーの状態にホッとしながら、道に上がると、大天使セイと女神が同時に出現し
「マリオンヌがはじけ飛んだぞ……」
「うん!たまには弾け飛ばないと!ナラン君どうだった?」
俺に満面の笑みで話しかけて来た女神に、いや何言ってんだ……マリオンヌを助けるのが先だろ……と思いながら
「色々あったんですけど、とりあえず服着て良いですか?」
「うん!着なくてもいいけどね!」
頭がおかしい女神の横から、畳まれ重ねられた俺の脱いだ服や下着を差し出して着たセイに感謝して着始める。サナーも起きてきた。
サナーが服を着ている横で、セイは念力で弾け飛んだマリオンヌの身体らしきゲル状物体を集め、くっつけ始めた。女神は嬉しそうに
「もうナラン君の記憶を見たわ」
そう言うと
「シーネちゃん、私の子どもだったかも」
「いや、よくわからないです」
確かにシーネを見た記憶があるが……何で見たのか分からないし、ぼんやりとしている。女神は微笑むと消えた。
マリオンヌはセイによって瞬く間に修復されると
「うへー……ひどい目に遭った。2人とも情報量が多すぎて、もぐもぐできないってえ……」
泣き言を言って、側溝にのそのそと移動すると溶けて去って行った。残っているセイが
「サナーのブレは収まったからな」
そう言うと、その場から消えた。サナーと俺はその事にようやく気付き、肩を抱き合って喜び、そして安堵する。
サナーがまだ戻りたくないと言うので、ライトアップされた空中都市をしばらく歩くことにする。もう陳情に来たモンスター達は居らず、いつもの様に閑散とした古い建物が延々と並んでいるだけだ。黙って、メインストリートだったであろう道を並んで歩いているとサナーがポツリと
「マリオンヌの中で、ナランと繋がってたから、アン王女の穢れみたいなのが私に話しかけてきた時も、すぐにそれとわかり合えたんだ」
「……何言ってるか全然分からんぞ」
サナーは照れ笑いをしながら
「私はそう言う感じだったんだよ!あとナランが情けない男だってのもよく分かったぞ!」
「……かもなあ」
別に情けなくても、これが俺なんだから仕方ない。自分ではこんな状態でよくやっていると思う。
しばらく歩いて、空中都市の端に辿り着くとサナーが下を見つめ
「すげー高いとこにあるなあ。教国の大きな島が小さく見えるぞ」
俺も下を見て、その通りだと思う。真夜中というのもあってぼんやりしか見えない。サナーは俺を見てニコッと笑うと
「……私が、ナランが好きなだけってのもよく分かっただろ?」
「……」
確かにマリオンヌの中でよく分かったが、それに何て返したら良いのかは分からない。いきなりサナーは立ち上がると
「あー!ぜーんぜん!私の愛に応えられない超ボンクラ御主人様でめちゃくちゃ不幸だなあ!妾でも奴隷でも2番でも良いって言ってるのに!」
夜空に向けて、微笑みながらそう叫ぶと、俺を見て
「私を抱きしめて見せろ!」
そう言って、飛んだ。
一瞬、空中都市の端から落ちていくサナーをそのまま放っておいたらどうなるか考えたが、もう、ここは俺の負けだなと、天使の翼を出し、よく晴れた夜空をサナーに向け降下して行く。飛ぶのも慣れたので、すぐに真横まで降下できたが、簡単に抱きしめるのも癪なので、降下して行くサナーを見つめる。
両目を瞑って、胸の前で両腕を組んだサナーは全く俺の助けを疑って居らず、とても幸せそうだ。軽く息を吐いて、両腕を伸ばし抱きしめようとしたその時、サナーの身体は真っ白な閃光に包まれ、俺の腕の中には、サナーと全く同じシスター服を着て頬を染めたシーネが抱きしめられていた。




