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冴えない俺が、何でも教えてくれる魔法を手に入れたけど……  作者: 弐屋 丑二
自己理解と目的の修正

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トリプルバインド

 箒を縦にして持ったシュマリアは嬉しそうに

「天使様、女神様とお話されましたか?」

「は、はい……シュマリアさんが正しいと言われていましたよ」

シュマリアは深く頭を下げてから、上げ

「あの、天使様は、もしやナラン様という御名ではありませんか?」

少し固まってしまう。恐らく、儀式参加者を全て覚えているのだろう。能力の高さに怖くなるというより、こんな優秀な人から守られている教都は幸せだなと思ってしまう。軽く息を吐いて

「そうですよ。リース・ウィズ姫の婚約者で、ヘグムマレー・ウィズ公とは知り合いです」

正直に話してしまうと、シュマリアは理解した様子で頷き

「……女神様のお導きですね。ウィズ公をも正されるということですか」

「……」

それはどうだろうか……。ヘグムマレーは善人だと思うが、確かにシュマリアが嫌いそうな政治的な裏技には長けている。とにかく

「すいませんが、聖塔に用事がありまして」

シュマリアは頭を深く下げてきた。逃げるように立ち去る。


 夜の教都を足早に歩いて行く。シュマリアから完全に監視されてるな。教都に居る間はずっと見られているのは確かだろう。覚悟しておこう、などと思いながら聖塔の裏口にたどり着き、守衛のモンク達に挨拶をした後、入っていく。


 通路を通り階段を登り、聖者達の待機室の扉を叩くとサナーの声で

「ナラン!待ってた!はよ!入って来きてくれー!」

扉を開けると、3重くらいに輪郭がブレたサナーが薄布を着て、壁際のベンチで途方にくれていた。リースは前と同じ位置で光に包まれながら跪いて祈っている。サナーは俺に横に座るよう促すと

「聞いてくれ!私!サナー・ボニアスって名字になってて!ボニアスの娘になってた!」

俺は頭を抱える。そ、そうか、女神がスズ・ボニアスっていう存在をサナーの代わりに造って成り代わってたから、それが復活したサナーに引き継がれたのか……。


 サナーは涙目でブレまくる自らの身体を見ながら

「奴隷じゃなくてナランの幼馴染で……それから、実はボニアスがサーガ共和国の王族の血統だということが分かって……サーガ共和国に引き取られた所で、聖者スキルが発現したってことになってた……それで、ここまで護送されて来たんだって……」

こっちはアン王女の事情だな。二つの事情がくっついて、もう無茶苦茶だろ……サナーの輪郭ブレまくってるし、どうすんだよ女神……。俺が頭を抱えていると扉がノックされ

「あの……ナラン様いらっしゃいますか?」

いきなりシュマリアの声がして、俺は驚いてそちらを見る。


 恐る恐る扉を開けると、シスター服のシュマリアが立っていて

「勤務時間終わったので、来てしまいました」

ずっと追尾されてるな……余程興味を持たれているのか……それとも隠密警備任務なのか。とにかくテンプルナイトに失礼なことは出来ないと

「……ど、どうぞ」

入って来たシュマリアは、輪郭が3重のサナーを見ると、驚いた様子で

「これは……ダブルバインド状態ですね……いや、トリプルバインドか……素晴らしい……女神様の奇跡を目撃しています」

胸の前に手を重ねてサナーに向け、祈り始めた。それが終わるのを待って

「どういうことですか?」

「古文書で稀に記録があるのです。女神様が、特定の人物を守るため、存在を多重に重ねられるということが」

サナーが涙目で

「治るのか?」

「んー……聖者サナー様には、御本人含め三人の存在が重ねられているように見えますが、その三人が同化した時、治まると伝えられています」

サナーは心底困った表情で俺を見つめてくる。いや、こっち見ないで欲しい……。

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