分かりやすい天からの啓示
一瞬、視界が暗くなって、そして明るくなると、強烈な酒と汗や香水の匂いがして、嗅覚がおかしくなりそうになる。吐き気と共に視線を回すと、薄暗い部屋の床に、俺が宿っている神像は倒れているということが分かった。近くのベッドでは服を着ていない太った全身が、猫の毛に覆われたニャンギエフが
「んにゃーんにゃー」
などと大きないびきをかいて寝ている。
ニャンギエフの横にはどうやら誰か……恐らく女と添い寝しているようだが、ベッドの反対側なのでこちらからは見えない。コイツ、ホント聖職者かよ……俺よりいい加減な生活してるとかやべーなマジで……などと思いながら、どうにかコンタクトを取ろうと
「ニャンギエフ司祭……ニャンギエフ司祭……大天使ナランです……起きるのです……」
とりあえず言葉を発してみる。俺の視界の周囲が明るくなっているので、マリオンヌが神像を光らせる演出も入れてくれたようだが、ニャンギエフは全く起きる気配がない。
……いや、これ無理だろ。神像を床に放り投げて酒浸りで女と寝てる大司祭ってなんなんだよ。分かりやすい天からの啓示に気付きすらしないし、マジで天罰食らうぞ……ってそうか……女神のお気に入りだからそれもないか……くそーっ!なんていう世界なんだ……。絶望していると、ニャンギエフの山のような猫ボディの向こうからゴソゴソと音がして
「ん……何か、光ってる……?」
色っぽい女性の声がした。
猫耳を生やし、薄い着物を羽織ったバケネコ族らしき女性はニャンギエフの身体を跨ぎこちらへと来ると床にしゃがみ、俺に向けて手を伸ばし握る。そして派手目な自らの顔に近づけた。顔のドアップにビビっている場合じゃないと
「……そこに居る者……私は大天使ナラン……この神像に宿り……ニャンギエフ大司祭に啓示を伝えに来ました……」
女性は驚いて
「ひゃああ……!」
悲鳴を上げ、勢いよく俺を投げ捨てた。「ガンッ」という音と共に近くの壁に当たり跳ね返り、床にうつ伏せで落ちる。痛みはないが、なんだこの神の使い……と思う。女神が見てたら爆笑してるだろうな……。




