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冴えない俺が、何でも教えてくれる魔法を手に入れたけど……  作者: 弐屋 丑二
自己理解と目的の修正

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もぐもぐ……

 マリオンヌは半透明な自らの身体の中に浮かぶアン王女を「もぐもぐ……」と咀嚼すると

「あー……いいいいいねええ……生まれながらに日陰者の王族で、スキルも凡庸、見た目も地味……コンプレックスだったんだねえ……」

ずっと気絶していたアン王女は急に両眼を開けると俺と目が合う。そして一糸まとわぬ自らの姿と、大きなスライムであるマリオンヌに飲まれた状況を把握したのか、全身を真っ赤にしながらジタバタし始めて、その内、口から大きな泡を吐くと両眼をトロンとさせ、口を半開きにしたまま、大人しくなって浮かびだした。


 マリオンヌは大きな1つ目を細め「もぐもぐ」と咀嚼しながら

「くあー……今更、偽聖者としての道中と儀式での失態を思い出してる……世界中に取り返しがつかない恥を晒したのが……うん、気持ちいい?……いや、恥ずかしいような……気が狂ってしまいそうな……常に身体の斜め下から突き上げるようなこそばゆさ……変なスイッチが押されたねえ……もう普通には戻れないかも」

アン王女の穴という穴から色んな液が溢れ出してくる。大天使セイが真面目な顔で

「マリオンヌによる修復と強化だ」

「これ大丈夫なんですかね……?」

セイは自信ありげに頷くと

「狂わぬように補修しているな。ナランには悪いが、アン王女には何れ神罰が下される」

「……え?」

セイはマリオンヌの中で口を半開きにして色々垂れ流しながら浮かんでいるアン王女を眺め

「途中で人格的に覚醒できれば、女神も触れたかも知れんが、器が広がることは一切なかった。肉体がマゾヒズム的快楽に目覚めただけで、心の深奥へ降りていけなかったな」

「最終的に神罰島送りってことですか?」

「このままだとそうなる。その為の下準備でもあるんだよ。補強しないと壊れる。女神の気遣いだな。あのサイコも多少は優しいだろ?」

……出来心で偽聖者スキル付けただけで、人生超ハードになったのか……。あと女神のこと、今大天使が、サイコって言ってよな?聞き間違えか?


 マリオンヌは咀嚼を続け、その半透明の体内でアン王女は逆さになり、腹を向け、背中を向けと揺らぎながら浮かび続ける。

「そうかあ……すごろくを突破したナラン君を見て……初めて恋に落ちたんだねえ……自分も彼の横に並びたいと思って……ナラン君の自宅近くに屋敷を建築し……そしてえ……古代遺物の力を使い……偽聖者スキルを付けた……大罪を犯したねえ……もぐもぐ……大国の名家跡継ぎであるリースちゃんがナラン君の横に居たのも焦りを深めた……」

マリオンヌはプルプルと小刻みに揺れながら

「そして……ずっと、本物の聖者になったリースちゃんに横に並ばれ……うめえなあ……もぐもぐ……ずっと届かない高みを見上げている感覚が続き……惨めな自分と比較し続け……そう、何一つ勝てないことが……気持ちよく感じてしまったんだねえ……」

マリオンヌの中で浮いているアン王女がブルッと大きく震えると、体中の穴という穴から真っ黒な煙のような液体を噴き出した。


 腕を組んだセイが頷き

「よし、淀みを放出したな。マリオンヌはこれを喰うのが目的だ」

「リースの時もありましたね」

そういうことだったのか……納得していると

「こっちは終わったわ」

女神が俺達の横に出現した。セイが目を細め女神を見下ろすと

「こっちももう終わる」

「たまに考えるんだけど、マリオンヌの中に2体同時に入れたら面白くない?」

何言ってんだこの邪神……俺が呆れているとセイが苦笑いして

「スキルや人格の錯誤が起こるかもな」

「新しい神罰として良いかもね」

「良くない。情況が複雑になるだけだ。余計なこと考えるな」

「そうかなあ……面白そうだけれど……」

本気でやりたそうな女神こええな……と思いながら、まだマリオンヌに咀嚼されているアン王女を眺める。

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