思い描いていた神の奇跡
アン王女を食べる……いや確かマリオンヌはここから出られないから、アン王女を連れて来ないといけないということになる。無理だろ……黙って大天使セイを見ると
「連れて来よう。こういう時のための奇跡がある」
余裕の表情で言ってくる。
山頂へとセイと羽ばたきながら降下して行く。相変わらず重なった平たい岩の上でリースは跪き祈り続けていて、その横でアン王女は色々垂れ流したままぶっ倒れている。セイは岩に近づくと、アン王女の方へ手を翳し
「アン・サーガよ……数々のお前の罪をこれから天界で裁く……はっ!」
軽く力を入れて叫んだ。
次の瞬間、アン王女の頭上に神聖な光が振り注ぎ始め、それは大きな光の束になり、アン王女の全身を包み込むと、身体をゆっくりと浮き上がらせ始めた。すげえ……思い描いていた神の奇跡そのものじゃん……見惚れていると、瞬く間にアン王女は空へと昇っていってしまった。セイは天使の翼を出すと
「ナランも出しとけ。セイ様は無くても飛べるが、後ろで見てるやつ用だ」
俺が天使の翼を出しながら背後を振り返ると変わった見た目の中年男性……確か、異端審問官のチョタミナが慌てて走って来ている所だった。セイは気にせず俺の手を握り、夜空へと羽ばたき上昇していく。
アン王女を包み込む光は、上空のジン・スカイストリートへと吸い込まれる様に消え失せ、俺は手を離したセイと共に翼を羽ばたかせ、空中都市の中心部の崩れた城門の前へと向かう。
たどり着くと、ちょうどプルプル震えているマリオンヌの前に、神聖な光に包まれたアン王女が降下して行くところだった。俺達もほぼ同時に着地すると、マリオンヌは待ちきれないと言った表情で
「う、うわー……何という芳醇な罪の香り……サーガ共和国の無垢な民達の期待を裏切って騙している……とてつもない大罪人だね」
セイは真顔で
「すごろく会場で、ナランと出会わなければ、ここまでは暴走しなかったかもな。あの、すごろくさえなければな……」
マリオンヌは仰向けに寝ているアン王女の腹に触手を伸ばしてペチペチ叩き
「栄養不足と水分不足だ。恐らく脳内物質も不足している。そこは僕が補ってあげよう。食べていい?」
マリオンヌとセイが同時に俺を見てきたので
「俺に決定権あります?」
マリオンヌは大きな1つ目と口を嬉しそうに歪ませ
「ハーレムの構成員でしょ?」
「自分の女の責任は持て」
セイもニヤニヤしながら言ってくる。
「いや違いますって!何もないですし」
俺がそういうのを待っていたかの如く、大口を開けたマリオンヌに、セイが抱えたアン王女を放り込んだ。




